メディアも「ボーイズクラブ」である

こういうやりとりが続くと、どうなるか。まず現場の記者は「どうせ取り上げてもらえない」と感じるようになる。次第に、記者一人ひとりの問題意識が丸く削られ、常に上層部を意識した視点でものを見るようになる。メディアもまた「50歳以上の男性」が決定権を握るボーイズクラブだ。

メディアの目が緩くなれば、政治家はのびのびと、問題発言を発するのではないだろうか。そこで議員が意図的に問題発言やヘイトスピーチを繰り広げてしまう影響は、非常に深刻だ。

発言が事実として広まること。当事者を傷つけること。差別や偏見を助長すること。制度や政策が進まなくなること(あるいは逆行すること)――。これらは、発言者の意図とは無関係に起こりうる。だから問題発言は問題なのだ。

こう考えると、世に出る問題発言は「氷山の一角」なのかもしれない。無数の問題発言がスルーされ、身近な制度や政策に反映されているかもしれない。

問題発言をする人は、ずっとしている

にかほ市議会での問題発言を知らせてくれたのは、一人の有権者の声だった。ここに、可能性を感じている。多様な視点から議会や政治家の発言をチェックする目があれば、よい意味での緊張感が生まれる。

「問題発言をする政治家っていうのは、その時だけじゃなく、実は普段からもうずっと問題発言をしていると思います」

こう指摘するのは、フリーライターの和田靜香さんだ。

「たまたま耳に入った際立ってひどい発言が報道されるだけで、もっといろんな場で問題になる発言をしていると思う。だからやっぱり市民ができるだけ議会を傍聴して『あの人、またこんなこと言ってる』っていうのを常にチェックし続けなきゃいけない」

最近は人権侵害になる「問題発言」を意図的に発して悪目立ちし、SNS上で支持を集めようとする政治家もいる。

「そうなるともう、住民が動くしかない。しつこくしつこく『その発言はおかしい』と言い続け、議長や議会事務局に申し入れるということをコツコツやって、この議員はだめだと可視化する。そして、次の選挙では落とす。それしかないんです」

問題発言について申し入れをしたら、SNSで発信したり、例えば駅など街頭で「議員がこういう発言をした。問題だと思うので私たちはこういう申し入れをした」と声を上げてみたりする。

「そんな時間はない? 分かります。それならせめて、そういう市民運動をする人を冷笑しないことです」