抗がん剤の副作用

「化学療法(抗がん剤治療)」は、外科手術では治療できない血液やリンパのがんも治療できる、体内に広く分布するがんに対応できる全身療法である、といったメリットがある。がんの増殖を抑えたり、転移や再発を防ぐ効果もあるとされる。

だが、抗がん剤の作用はがん細胞にだけ及ぼされるわけではない。正常細胞にも働いてしまう(分子標的薬を用いたがん薬物療法は後述する)。副作用をゼロにすることも困難だ。代表的なものだけでも吐き気、脱毛、倦怠けんたい感、頭痛、めまい、発熱、悪寒、発汗、疼痛とうつう、しびれ、麻痺、患部の腫れ、むくみ、咳、口内炎、食欲不振、高血圧、血尿、頻尿、下痢、皮膚障害などなど。

抗がん剤の祖は毒ガスと言われる。事実、日本初の抗がん剤「ナイトロミン」は第一次世界大戦の際にドイツ軍が使用したマスタード・ガス(イペリット)を起源としている。「毒をもって毒を制す」とでも言えばよいのだろうか、抗がん剤はその強い毒性でがんを攻撃する。その毒が正常細胞に影響すれば、「がんを叩く」という主作用以外の作用が起きてしまうのもいわば当然だろう。

病院のベッドで眠る患者
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
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がん免疫療法との違い

また、がん細胞に抗がん剤に対する耐性がついてしまうことがある。その場合、その抗がん剤はもう使えなくなる。数週間で耐性ができることもあり、再発しても使えない。

原因の多くは、がんが変異することにある。がん細胞は正常細胞の100~1000倍の頻度で遺伝子に変異を蓄積していく。結果的に、過酷な環境を生き抜いたがん細胞だけが増えていき、投与できる抗がん剤の選択肢も減っていく。

「第四の治療法」とも言われる「がん免疫療法」にも触れておこう。

がん免疫療法とは「患者の免疫力を高めてがん細胞への攻撃力を強化する治療法」だ。

標準治療でも、免疫細胞が作るインターフェロンやインターロイキンといったタンパク質を投与して免疫細胞を活性化する治療法を「サイトカイン療法」と呼んだり、膀胱ぼうこうがん治療に使われる「BCG膀胱内注入療法」を「膀胱がん免疫療法」と呼んだりして、がん免疫療法の一種とする場合もあるのでややこしいが、国立がん研究センターの区分では、現在、保険適用となっているがん免疫療法は次の2つだ。