中国で銀行員の新規採用が減り、リストラが進んでいる。ジャーナリストの福島香織さんは「習近平政権の目玉政策は金融機構改革、すなわち腐敗撲滅を建前に金融機関に対する監督統制を強化すること。その結果、人員削減を迫られる金融機関が相次いでいる」という――。

※本稿は、福島香織『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房)の一部を再編集したものです。

ひび割れた五星紅旗と100元札
写真=iStock.com/Tomas Ragina
中国の国有銀行で起こった抗議(※写真はイメージです)

中国の国有銀行で起こった抗議

上海の国有商業銀行である「浦発銀行」のクレジットカードセンターの職員100人余りが5月11日、職場前で座り込み抗議を行ったことが、中国内外で一時話題になった。

浦発銀行の子会社である「浦発理財」の社員の給与が大幅に減給された、という情報もネットで拡散された。

単に一銀行の問題というより、中国の金融界の問題が反映された事件として、中国内外で注目されたのである。

ネット上の情報を総合すると、中国のメーデー連休が終わってまもなく、一部の職員が出社すると、突如クビを言い渡されたり、給与大幅カットを告げられたりしたという。

中国ネットメディアの『中新経緯』などによると、クレジットカードセンターの職員の多くは、浦発銀行の正規職員ではなく、上海外服傑浦企業管理有限公司という人材派遣会社の契約社員だった。

「派遣切り」に怒り

2022年12月、この人材派遣会社は契約社員に、労働契約を解除し条件の悪い別の新たな請負企業と契約し直すように要求した。

だが一部の契約社員は、この転職条件に不満を持ち、要求を拒否していた。

5月10日夜、呼び出された契約社員たちは、労働契約解除を再度通知され、同意の署名がなくてもクビにできると言い渡された。

これに不満を持った契約社員たちが翌11日、浦発銀行のクレジットカードセンター前で座り込み抗議を行ったという。

この座り込み抗議の写真や動画は、中国国内外のSNSで拡散された。