独裁国家ゆえ「荒療治」が可能
日本のバブルの時には、住宅ローン専門のノンバンクである住宅金融専門会社(住専)が、バブル期に甘い審査基準で不動産融資を拡大していた。だがバブル崩壊とともに、6兆5000億円もの不良債権が積み上がってしまった。この処理に、政府は、約6500億円もの公的資金を投入したのである。
住専は、銀行などの金融機関が出資母体であるが、融資平台は地方政府が返済を肩代わりする。その点では、地方政府の債務と同じである。最終的には、中央政府の財政出動で救済できる。習近平政権は、財政赤字を拡大させても、この問題を解決せざるをえないだろう。
中国では、経済が順調であれば、共産党は独裁を維持できる。そのためには、習近平政権は、あらゆる手段を講じるであろう。今の経済不振を解消するには、2、3年の時間が必要だろうし、かなりの荒療治も行わねばならない。
しかし、日本と違って、独裁国家だからこそ、それは可能である。習近平政権が米中関係を決定的に悪化させないような外交努力を展開しているのは、今の経済不振を打開するためでもある。
一時的に危機は回避できても、破綻は免れない
以上の考察から、荒療治が必要であるにしろ、中国経済が今すぐ崩壊することはないと判断する。
習近平の父親は鄧小平から不当な冷遇を受けている。習近平自身もそうした鄧小平への怨念もあって、毛沢東路線に回帰していると思われるが、それによって習近平が民間の自由な経済活動を阻害しているのは問題だ。
この方針はいつまで続くのか。一時的に危機は回避できても、最終的には今の習近平路線のままでは、中国経済の破綻は免れないであろう。習近平が倒れるか、中国が崩壊するかの分水嶺が数年後にやって来る。
スターリン、プーチンの伝記に続き、いま私は毛沢東伝を執筆しているが、それが完成する頃には習近平は過去の人になっているかもしれない。