「格好いい大人」になれる教養

歴史の雑学を披露して、周囲から一目置かれるケースもあります。私が20代の頃、戦時中の資料を展示した博物館を見学したときのことです。展示品の中には千人針せんにんばりが置いてありました。

今村翔吾『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)
今村翔吾『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)

千人針とは、1枚の布に1000人の女性が1針ずつ赤糸を縫いつけ、1000個の縫い玉を作ったものであり、武運長久・安泰を祈って出征兵士に贈られていたものです。学芸員さんにいろいろお話を聞いている中で、ふと思い出した知識をしゃべってみたところ、非常に驚かれました。

「千人針って1人1回ですけど、寅年の人は年齢の数だけ縫うことができるんですよね?」
「なんでそんなこと知ってるんですか。お若いのに!」

「虎は千里を行き千里を帰る」という故事から、寅年生まれの女性に年齢の数を縫ってもらうと効果が大きいとされ、糸で虎の絵を描くことも多かった。だから戦時中は寅年の女性が重宝され、あちこちで引っ張りだことなった――。こんな知識を何かの本を読んだ記憶があったのです。

歴史の雑学は、人生において直接役立つとは限りませんが、人間にある種の深みをもたらしてくれます。教養があれば、格好いい大人になることができるともいえるでしょう。

【関連記事】
【第1回】史実からかけ離れた歴史ドラマはアリなのか…直木賞作家が「司馬史観を批判するのはおかしい」というワケ
史記にはこう書いてある…キングダムにも登場する「両足を切断された兵法家」が実行した復讐の中身
NHK大河ドラマでは描けそうにない…唐人医師と不倫していた徳川家康の正妻・築山殿の惨すぎる最期
「怪物・大谷翔平」の起源はここにある…目標までの過程を丸裸にする「マンダラチャート」の活用法
気がつけば「日本人初の全米1位」獲得…米国で驚くほど有名な日本人ピアニストが音楽活動より優先したこと