コンテンポラリージャズ・ピアニストの松居慶子さんは、アメリカの音楽業界で最も有名な日本人の一人だ。これまで3つのアルバムで「全米1位」を獲得するなど、その活動は高く評価されている。だが、アメリカでの成功は自らが強く望んだものではなかったという。松居さんの数奇なキャリアを、ノンフィクション作家の梶山寿子さんが取材した――。

日本人で初めてジャズで全米1位を獲得したアーティスト

80年代のシティポップが再評価されるなど、近年、日本人アーティストの楽曲が海外でも人気を集めている。藤井風の『死ぬのがいいわ』が、昨年、音楽ストリーミングサービス、Spotifyの「グローバル・バイラル・チャート」で最高4位を記録。今年7月には、米ビルボードのグローバル・チャート「Global 200」で、YOASOBIの『アイドル』が日本としては歴代最高位となる7位にランクインしたのも記憶に新しい(7月1日付。アメリカを除いた「Global Excl. U.S.」では首位)。

だが、こうしたJ-POPブームが起きる前から、35年以上にわたってグローバルな音楽シーンで活躍している日本人アーティストがいることをご存じだろうか。

その人の名前は、松居慶子。コンテンポラリージャズ・ピアニスト、作曲家で、拠点を置くアメリカはもとより、ヨーロッパや南アフリカなど、世界中に熱心なファンを持つ。

1987年の全米デビュー以来、発表した30枚のオリジナルアルバムすべてがヒットチャート上位に。米ビルボードのコンテンポラリージャズ・アルバムチャートでは、2001年の『Deep Blue』を皮切りに、2016年『Journey To The Heart』、2019年『Echo』と3作品が1位に輝いた。名だたるミュージシャンがひしめくアメリカのジャズ界で3度の首位獲得は、言うまでもなく、日本人初の快挙である。

J-POPとはジャンルが違うものの、世界の第一線で日本人が活躍し続けていることは称賛に値しよう。