米メジャーリーグ・エンジェルスの大谷翔平選手が絶好調だ。今年6月は、日本選手と球団の月間最多記録となる15本塁打を放ち、自身3度目の月間MVPを獲得した。活躍の背景にはなにがあるのか。ライターの広尾晃さんが、元プロ野球選手で野球指導者の根鈴雄次さんに聞いた――。
ホワイトソックス戦の4回、同点ソロ本塁打を放ちベンチで迎えられるエンゼルスの大谷翔平=2023年6月27日、アメリカ・アナハイム
写真=時事通信フォト
ホワイトソックス戦の4回、同点ソロ本塁打を放ちベンチで迎えられるエンゼルスの大谷翔平=2023年6月27日、アメリカ・アナハイム

メジャーの歴史を変え続ける大谷翔平

まさに前代未聞だ。大谷翔平は日本野球だけでなくメジャーリーグの常識さえも覆しつつある。

2020年にア・リーグMVPを受賞、昨年は、唯一無二の「二刀流」で頂点を極めたかと思ったが、今季は打者として本塁打王、いや三冠王が狙える位置にある。さらに投手としても最多奪三振でリーグ2位(7月5日時点)で、投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞の可能性も見えてきた。

なぜ、今シーズンこれだけの結果を残せているのか。筆者は、日本で最もメジャーリーグの打撃を知ると言われている根鈴ねれい雄次氏に、大谷の今シーズンの活躍の理由を聞いた。

6年前と比べて1.5倍身体がデカくなっている

根鈴氏は法政大学野球部出身で、卒業後の2000年、単身アメリカに渡る。モントリオール・エクスポズ傘下でAAAまで昇進するが、ケガや不運もあって昇格できず。もし根鈴氏がメジャーに昇格していたらイチロー、新庄剛志(ともに2001年メジャー移籍)に先立つ「日本人初の野手のメジャーリーガー」になったはずだった。

エクスポズ傘下を退団した根鈴氏は、米独立リーグ、メキシカンリーグなどでプレーののち帰国。日本の独立リーグを経て引退、2017年横浜市内に野球塾「アラボーイベースボール・根鈴道場」を設立した。

根鈴氏の元を訪れる選手はアマ~プロと幅広い。横浜市内にある「根鈴道場」にて。
筆者撮影
根鈴氏の元を訪れる選手はアマ~プロと幅広い。横浜市内にある「根鈴道場」にて。

根鈴道場には小学生から大学生まで多くの野球選手が通っている。その多くは「甲子園よりメジャー」志望だ。またプロではオリックスの杉本裕太郎選手が2020年オフに根鈴道場に通い、パ・リーグの本塁打王を獲得。昨年オフはロッテの藤原恭太選手が根鈴道場に通った。根鈴氏は、今年の大谷の大活躍をどう見ているのだろうか? (以下、「」内はすべて根鈴氏)

「大谷選手はMLBに移籍して6シーズン目ですが、最初の頃に比べてフィジカルが全然違いますね。大げさに言えば1.5倍くらい身体が大きくなっている」