ミスショットでもホームランになる

バッティングの技術はどう進化したのか。

筆者は大谷翔平が移籍した2018年オフにも根鈴氏に話を聞いている。この時、根鈴氏は「反対(左打者の場合、中堅から左翼)方向の本塁打を打ったことで、メジャーでも評価された」と話していた。

「最近もセンターや左方向にホームランが出ている。左投手のスライダーを逆方向に140メートル飛ばしたホームランもあった。あのスイングが大谷選手のデフォルト(標準、基準)になっているのでしょう」

バットの芯に当たって思い切り振れば、右方向の引っ張りの本塁打が出る。しかしメジャーでは変化球が多いので、それだけでは本塁打は増えない。

「多くの人はみんな引っ張って飛んで行ったホームランに注目するけど、大谷選手は『バーティカルスイング』もできる。この打法はボールとバットが当たる面積が大きい」

バットを横ではなく縦に出すバーティカルスイングは、トラウトなどMLBの強打者の打撃スタイルだったが、「フライボール革命」以後、注目されるようになる。

横方向でバットを当てるよりも、下からバットを振り上げる「バーティカルスイング」の方がボールとバットが当たる面積が大きい
筆者撮影
根鈴氏が実演する「縦のスイング」。インパクト時のバットが縦になることで、ボールとバットが当たる面積が大きくなる。

日本ではバットを地面と並行になるようにスイングするレベルスイングや、バットを上から下方向に振り下ろすダウンスイングが長く主流だが、大谷はバーティカルスイングで本塁打を量産している。

「手が長くてバットも長くて、パワーもある選手が縦にバットを出していけば、多少のミスショットでもスタンドまで飛んでいく。普通の選手ならライト前ヒットのところが、ホームランになってしまう」

大谷が小顔に見える理由

「今年の大谷選手は、以前より顔が小さくなったように見えます。それは、上半身、特に僧帽筋など首周りの筋肉が大きくなったからでしょう。まるでガンダムみたいな身体になった。

大谷選手はトレーニング方法も、早くから本場アメリカのやり方を学び、それを実践しています。日本には優秀なトレーナーはたくさんいるけども、自分自身が大谷翔平よりガタイが大きいトレーナーってめったにいない」

WBCでチームメイトになったヤクルトの村上宗隆は、目の前で見た大谷の肉体の大きさ、そして打撃練習でのスイングのスゴさや飛距離にショックを受けたと報じられた。

「目の前で大谷選手を見て、村上選手も数カ月で追いつけるようなものではないことに気付いたのでしょう。でも、村上選手は23歳と若いのだから、今からトレーニングを始めればいい。そしてできるだけ早くアメリカに行った方がいいですね」