知らず知らずのうちに雑談のスキルが上がる

昭和の高度成長期には、社会人の多くが司馬遼太郎や池波正太郎の作品を読んでいました。だから、作品を読んでいるだけで、職場の上司や同僚とのコミュニケーションが円滑になるという側面もありました。

それに比べて、現在は歴史小説の読者が確実に減っています。小説の話題で雑談が盛り上がるというシチュエーションはめっきり少なくなりました。しかし、個別の作品の話題で盛り上がれなくても、小説を読んでいれば、それなりに雑談のスキルは上がります。全国各地の地名や大名家、食材などの雑学知識が知らず知らずのうちに蓄えられていくからです。

春の岩手公園
写真=iStock.com/nattya3714
※写真はイメージです

ビジネスでは、地方出身者とお会いする機会が多々あります。私は「どちらの出身ですか?」と尋ねることがよくありますが、「岩手です」という答えが返ってきたら、「岩手といえば盛岡?」と重ねて問います。たいてい県庁所在地の人口が多いので、これは穏当な聞き方です。

小説で得た知識が生かされるのは、ここからです。「盛岡じゃないんです」という答えが返ってきたら、とにかく知っている地名を適当に並べていきます。「花巻、遠野、釜石、大船渡、奥州、一関……」一発で当たれば盛り上がりますし、逆に10くらい市名を挙げていくと「よく岩手の地名をご存じですね」といわれます。どっちにしても会話がはずむのです。

名字から出身地を推測できる

さらに、「岩手だったら、菊池さんとか及川さんが多いですよね」などというと、「なんでそんなこと知っているんですか⁉」とびっくりされます。

私は苗字から出身地を推測するのも得意です。たとえば、毛利さんとお会いしたら「山口県出身ですか?」と聞きます。長州藩の毛利家に縁があるかもしれないからです。「うちの毛利は違うんです」と言われたら、次の仮説をぶつけてみます。「あ、もしかして毛利秀頼とか、尾張系の毛利ですか? 毛利と書いてモリって読むタイプですか?」。こんなふうに聞いていくと、さらに「よく知ってますねー」と感心されます。

あるいは、出身地の市町村名を聞くと、近隣の城や名所旧跡も思い浮かびます。

「あー○○市ですね。それなら□□って山城ないですか?」と尋ねると、やっぱりびっくりされます。

「ありますけど、地元の人しか知らないようなところですよ。よく知ってますね!」
「一度行ってみたいんですよ」
「いやいや、あんなのただの山ですって」

こんなふうに会話が盛り上がることが、たびたびあります。