陸自本隊からは“影の軍隊”として胡散臭いと思われている

元別班員のAに何回も会って話を聞いていくうちに、別班の実態が少しずつ見え始めてきた。

Aによると、自衛隊情報保全隊(陸海空の旧調査隊を統合再編して設立)や陸上自衛隊中央情報隊(基礎情報隊=旧・中央資料隊、地理情報隊=旧・中央地理隊、情報処理隊、現地情報隊など)、情報本部、陸海空幕僚監部の情報部など、「防衛省・自衛隊の情報の世界」では、別班は「本物のプロフェッショナル集団」として一目置かれていた。しかし、陸上自衛隊でその存在を知っている幹部らにとっては「(別班の話題が出ると)顔をしかめるような存在だった」という。要するに「影の軍隊」は「胡散臭い存在」と見られていたのだ。

非公然の秘密情報部隊なので、当然と言えば当然だが、「班員たちはものすごいプレッシャーを受けており、班員の半数ぐらいは精神的に、あるいは社会的に別班の活動に適応できず壊れてしまった」という。Aは「誰にも言えない違法な仕事をさせられているのだから、無理もないと思う」と同情を示した。何もわからずに別班に配属され、仕事の内容にショックを受けて「こんな非合法なことはできない」と言って別班を辞める隊員もいたという。

違法性のある仕事を続けている別班員の3タイプ

同僚たちをずっと客観的に観察してきたAは、別班員を次の3種類に分類していた。

①自分たちは、防衛省・自衛隊の情報分野でのスーパーエリートだと思い上がっているタイプ
②組織を維持するため、旧陸軍中野学校の伝統を継承して、後輩に引き継いでいけばいいと思っているタイプ
③自分としてはやりたい仕事ではないが、組織に命令されて仕方なくやっているタイプ

3種類のタイプとも、これまで私が付き合ってきた普通の自衛官とは明らかに違っていた。非公然秘密情報組織という形態が自衛官個人の人格を歪めてしまっているのか。何しろ別班員は、家族にさえ内容を話せないような非公然、非合法な任務を命令ひとつで遂行しなければならない日々を過ごしているのだ。そのプレッシャーたるや想像を絶するものなのだろう。どうかして自分自身を納得させなければ、前述したケースのようにリタイアへ追い込まれても不思議ではない。