それまでの友人関係を精算し、年賀状も出せない境遇に

別班員になると、母校の同期会や同窓会への出席を禁じられるなど、外部との接触を完全に断つことを要求されたため、Aも仕方なく実行した。

親しい友人と呑みにも行けなくなった。年賀状さえ出してはいけない、近所付き合いもダメだと指導された。信じ難い世界に最初は大いにとまどったという。別班在籍時にも陸上自衛官としての身分証明書は受け取っていたが、上官から「自宅に保管しておけ。絶対に持ち歩いてはいけない」と厳しく指導されていた。

ストレスを感じている男性
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しかし、自衛隊情報保全隊や陸上自衛隊中央情報隊、陸上幕僚監部運用支援・情報部(旧調査部)など情報畑の親しい人間には、「Aは別班入りしたようだ」とそれとなくバレていたようだ。外部との接触を完全に断つことによって、逆に注目が集まるからだという。情報畑の人間は仲間同士でも、決して大声では話さないが、目配せしながら「ヤツ、別班らしい」と囁き合うのだという。

「少なくとも月に数十万使え」と言われる豊富な“軍資金”

別班の資金は極めて潤沢だった。Aによれば、別班本部が管理している、情報提供に対する報償費などの活動資金が枯渇してくると、そのたびに陸上幕僚監部運用支援・情報部は、防衛省情報本部に何とか都合をつけてもらっていたので、正規の予算とは関係なかったという。

赤旗取材班に届いた内部告発の手紙(「外国の情報は旅行者や外国からの来日者に近づいて金で買収します。日本からの旅行者には事前に金を渡して写真やききたい事を頼みます。(中略)一部は500部隊からも貰います」との記述)が思い起こされる話だ。資金源が米陸軍第500情報部隊から防衛省情報本部に変化しただけで、別班の資金は一貫して豊富だったのだろう。

Aは別班に入隊した直後、やっと一人の協力者を獲得し、月に2~3度接待して経費を請求したところ、「少なくとも月に数十万円単位で使え」と上官に注意され驚いたという。領収書は一切不要で年間数百万円。

「カネを請求する時は、多めに吹っ掛けて請求していた」

資金があまると、自分たちの飲み食いや風俗遊びに使ったという。内部で豪華な宴会を開くこともたびたびあり、金銭感覚は完全に麻痺していた。

「カネを使わないと、仕事をしていないと上官に思われてしまうから」

別班員たちは好むと好まざるとにかかわらず、まさに湯水のように、私たちの払う税金を使っていたのだろう。