魅力として挙げられる「おもてなし」
インバウンド(訪日外国人観光客)が戻ってきた。日本政府観光局(JNTO)によると、2023年7月は232万600人と、コロナ禍前(2019年7月299万人)と比べ、77.6%の水準にまで回復している。8月には、いよいよ中国人団体旅行客の訪日が解禁された。中国による日本産水産物禁輸の影響には注視する必要があるものの、早ければ今年中にもコロナ前のインバウンド水準を超すような勢いだ。
インバウンドの増加により、宿泊施設に商業施設や飲食店などは好調だ。こうした宿泊費や飲食費の消費に加え、東京やニセコなどへの不動産投資により、地域の雇用や税収といった形でプラスの恩恵をもたらしている。
一方で、旅館やホテルでの人出不足の問題や、鎌倉や京都、富士山などへの観光客の殺到は、連日テレビや新聞で取り上げられ、オーバーツーリズムへの対応策は喫緊の課題となっているのも事実だ。
世界的に海外旅行需要が急速に回復しているなかで、相変わらず、日本の人気は高い。京都など定番の観光地や自然に加え、日本食、アニメのキャラクター、円安で割安になっている買い物需要などが挙げられるなか、日本流の「おもてなし」もインバウンドを惹きつける魅力として挙げられることが多い。高級旅館や百貨店からコンビニエンスストアに至るまで、笑顔にあふれ懇切丁寧な接客や、街ゆく人々のやさしさや親切さが評価されているという。
東京・浅草や京都でテレビ番組のインタビューやアンケートで聞かれれば、外国人観光客は、判で押したように「おもてなしに溢れている」「皆やさしくていい、すごい」と答える。
日本流「おもてなし」がなくても支障はない
東京オリンピック誘致の際には、流行語となった「おもてなし」という言葉、我々日本人の多くは、日本がおもてなしの国だと考えているが、本当にそうなのだろうか。
世界60カ国以上を訪問し、国内外の観光地・リゾートに滞在した経験があり、また、海外旅行経験が豊富な国内外の富裕層と接してきた筆者としては、日本流のおもてなしは、日本人の自己評価が高く、特にインバウンドの増加にはあまり影響がないのではと考えている。
そもそも他国には、日本流「おもてなし」文化がないので、それがなくても支障もなく平気なのだ。例えば、笑顔がないぶっきらぼうな対応には慣れっこであり、それが日常でもある。むしろ、ニコニコしていると好意があると勘違いされたり、「油断あり」と見られて盗難など犯罪に巻き込まれたりする場合もあるため、常に周囲を警戒した険しい表情と態度だったりするのだ。欧米に限らず、アジアでも同じだ。微笑みの国タイは、あくまでもイメージ。皆が常にニコニコしているわけでは全くなかったりする。