外資系ブランドホテルの安心感

国内でもインバウンドに人気なのは、ヒルトンやシェラトン、マリオットといった外資系ホテルだ。実際、インバウンド需要と呼応する形で、日本全国、外資系ブランドのホテルは進出ラッシュが続いている。インバウンドが日本のサービスではなく、グローバル・スタンダードなサービスを求めているからではないだろうか。

日本には、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニを筆頭に、プリンスホテルや星野リゾートのホテルなどがある。箱根町の富士屋ホテル、長野県の上高地帝国ホテル、三重県の志摩観光ホテルといった日本を代表するクラッシック・ホテルも評価され、旅館や古民家を好むインバウンドが増えているのも確かであるが、普段使いなれた外資系ブランドホテルの安心感が勝るケースも多いのだ。

リッツカールトンやパークハイアットの安定感、安心感、ヒルトンやシェラトンの世界中どこにいっても変わらないサービスへのロイヤリティは高いものがある。そもそも観光や食事がメインで、休息する場でもある宿泊施設にまで、日本流「おもてなし」を求めていなかったりするのだ。

ホテルのモダンな客室に置かれたスーツケース
写真=iStock.com/Ziga Plahutar
※写真はイメージです

高級旅館より駅前ビジネスホテル

筆者にも苦い経験がある。海外から大切なお客様をお迎えし、東京と松山での商談後、良かれと思い、道後温泉のある露天風呂が有名な高級旅館を案内したことがある。ところが、くだんのお客様は、備え付けの浴衣に慣れず、豪華な日本食料理にはほとんど手を付けず、なんと露天風呂にも入ることなく、部屋のシャワーを浴び、ルームサービスを部屋で食べ直して、寝たという。彼らにとって、着慣れない浴衣、普段とは違う食事、シャワーではなく露天風呂という道後温泉の高級旅館での滞在よりも、普段使い慣れているであろう松山市内のグランドホテルやビジネスホテルのほうが、よかったのだ。

本件は、筆者の事前ヒアリング不足もあり、たまたまだったかもしれないが、我々日本人が良かれと思ったサービスや言動が、インバウンドにとっては押し売りになっているケースがあるのかもしれない。