なぜ森林が多いのに木材の自給率が低いのか
ところで日本は美しい自然を誇る。森林も多い。なぜ緑にあふれた国が木材を外国に依存しているのだろうか。日本では大半の住宅が木造なのに、日本は木材を自国内で完結できない“奇妙”な国だ。
もともと日本の木材自給率は1955年になんと96.1%もあった。しかしその後に輸入が続伸。ロシアや北米からの木材に依存するようになり、2000年代の前半には自給率は20%弱となった。2000年代の中盤から木材自給率はやや上昇し、2010年以降はバイオマス発電などの用途も加わったことから40%強となっている。
ただ近年に限っていえば供給量は横ばいとなっているし、まだ未来が明るいとまでは言いにくい。日本の林業は儲からないと有名で、林野庁の試算では補助金なしでは林業はたちゆかない。住宅以外の需要を探そうと、先に書いた通りバイオマス発電用途を見出した。しかしさほど儲からずに、十分に機械化されていない。
日本には伐採したまま放置された山が多くある。これから植林しても、使用できるのは数十年も先になる。なぜ日本の木材は採用されないのか。住宅メーカーの関係者に質問すると、国内材を使いたい希望はある。ただし質と価格が伴えば、と条件をつける。
外国産は品質が良いと評判が高い。たとえば冷寒地の木材は節(枝がその幹に丸く巻き込まれた部分)が大きくなく、力をかけた加工に強い。価格も安かった。国内は少量ゆえの非効率化が目立つ。木材が不足する局面であれば日本メーカーが増産に動いてもよいはずだ。
伐採業者はニーズを把握することができない
しかし、調達側企業が中長期的に日本メーカーへ切り替える方針を出さない以上は、生産増に足を踏み出しにくい。人手不足もある。さらに住宅市場も先行き不透明で一部の在庫もダブつく。
一般的に森林で伐採された原木丸太は、製材工場に送られ角材や合板に変わる。それを建材工場が購入し、建築用部材に加工し、それを住宅メーカーや建設会社が調達する。これは単純化したサプライチェーンであり、実際には多層に入り組んでいる。伐採以降は、誰もが資本の論理で動いているから、高ければ国産のものを買わない。さらにサプライチェーンが多層だから、森林で伐採する業者は、その先のニーズがわからない。
また、たとえば住宅メーカーは、工場で木材を規定サイズに切断・加工することを求める。ただ多様なサイズがあるため、国内では大量に処理することができなかった。懸念される強度の問題も、CLT(Cross Laminated Timber)といった技術が進化してきた。合板とも集成材とも違い、木材の繊維方向を直交させながら積層するものだ。これで強度が安定する。
しかし質が高くなってもコストの面での問題があり、道半ばだ。さきほど日本の木材の自給率を見た。6割は海外に頼っている。輸入の内訳を見ると、丸太の6割ほどは米国に依存し、製材はEUとカナダ、集成材もEUと、特定国に偏る。もちろん多くは友好国だが、当然ながら、危機時には米国やカナダは自国を優先する。