規格に合わない木材もあり供給不安は続いている

また日本の住宅メーカーはこれまで海外製に舵を切っていたため、日本の製材メーカーは設備投資を低く抑えていたので増産は難しかった。ウッドショックが起きたからといって日本に調達先を切り替えようとしても上手くいかなかったのは前述のとおりだ。ふたたび住宅メーカーの幹部との会話に戻る。

「ただ日本はすごく真面目にやっている。技術側も少しでもいい家を建てようと必死に頑張っているし、そもそも高い品質の住宅はお客様の要望だからね。それに木材の品質は時間をかけて決めたものだから、すぐに切り替えるわけにはいかない。たいしたことのない部材だってじっくり時間をかけて検討する。調達側も価格を抑えるために必死にやっていますよ。外国人バイヤーよりも真剣。だけど、海外では住宅が高騰しているし、賃金も上がって、住宅に支払える金額も上がっているわけでしょう。なかなか難しい状況ですよ」と正直に伝えてくれた。

なお、これは日本の品質要求が高いから、とは一概にいえないが、中国木材でも問題が起きた。各商社ともロシアから木材が輸入できなくなったので、なんとか中国木材を入手し混乱を防ごうとしたときだ。

住宅に使用する中国製合板が品質不適合になった。合板のサイズが規格に合わない、あるいは品質管理書類を提示しないなどのトラブルが続き、一部のメーカーはJAS(日本農林規格)として認証されなくなった。日本の品質要求が高いというより、管理体制が日本の望むレベルにないというべきか。日本への輸入は急減し供給不安はくすぶり続けている。

柔軟な価格改定は認められているが…

また値上げについては、スライド条項を取り上げたい。

これは国土交通省の説明を引用すれば「特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動が生じ、請負代金額が不適当となったとき、請負代金の変更を請求できる措置」だ。つまり市況価格が上がったら受注価格の改定を堂々と要求していい。

また民間同士の契約であっても同種の価格改定措置が盛り込まれている。たとえば、これは民間企業の調達規則だが「仕入先から単価改定の要望があった際、仕入先からその事情を聞いたうえで市況を調査する。結果、単価改定がやむを得ないと判断した場合は、価格変更要望書を起案する」としている企業がある。もっとも、価格変更要望書を作成しなければならない煩雑さがあるものの、これは組織の意思決定として証拠を残す意味がある。

しかし現実的にどうかというと、このスライド条項を認めてもらうことは困難だ。なぜなら民間には売買をする窓口である購買部門のKPI(Key Performance Indicator)があるからだ。簡単にいえば業績評価の基準だ。

困った男
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