偏った子育てにはどのようなリスクがあるのか。犯罪心理学者の出口保行さんは「親が高圧的に偏りすぎた場合、子どもは指示待ちに陥ってしまう。闇バイトに手を染める非行少年たちは、このタイプが多い。彼らはそれが犯罪であるという疑念を封じ込め、指示通りに生真面目に実行する」という――。

※本稿は、出口保行『犯罪心理学者は見た危ない子育て』(SB新書)の一部を再編集したものです。

正座をして、息子を叱る母親
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自分の劣等感を子どもに負わせる親

子どもからしてみれば、親の劣等感を補償する役割を負わされ、できなければ否定されるなんてたまったものではありません。そもそも、親自身ができなかったから劣等感になっているのです。子どもに対しては「できなくてはダメ」というのはおかしいですね。劣等感をどうにかしたいなら、自分で何とかしてください、と言いたいところです。

しかし、なかなか簡単には解消できないのが劣等感です。どうすればいいのでしょうか?

ある芸人さんは、子どもの頃、大きな劣等感を抱えていたそうです。それは、家が貧乏なこと。両親に生活力がなく、教科書や文房具を買うお金にも困っていました。

とくに、ボロ家が恥ずかしくてたまりません。屋根は隙間だらけで雨漏りします。だちに見られたくないので、学校からの帰り道は友だちから距離をとって歩いていました。

しかし、彼は高校入学後に変わります。多様な価値観を持つ友だちができたことで、ひっそりと隠れるように暮らしていたことを逆に恥ずかしく思ったそうです。

隠すのではなく、自分をさらけ出そう。そして、人を楽しませよう。そう思った彼は国立大学に進むと同時に、お笑いの勉強も始めます。そして大学卒業後に人気芸人になったのです。いつも陽気に振る舞う彼に、かつてそんな劣等感があったとは思いもよりませんでした。

劣等感を持ち続けると生きにくさにつながる

この話で注目したいところは、彼自身がありのままの自分を認めるプロセスです。

「自分は貧乏であることが恥ずかしい。でも、そんな自分でもいいのだ」と思ったから、ポジティブに変換していくことができました。

もし、劣等感を認めることができず、隠そうとばかりしていたらどうでしょうか?

劣等感の原因に対して、怒りや不満といった負の感情を持ち続けることになります。「貧乏は悪だ」という思いから、過度にお金に執着したり、貧しい人を軽蔑したりと、偏りも出やすくなります。学歴やスポーツ、芸術、見た目なども同じです。

劣等感、コンプレックスは誰でも大なり小なり持っているものです。それをネガティブなものとして心の中に持ち続ければ、生きにくさにつながります。