偏った子育てにはどのようなリスクがあるのか。犯罪心理学者の出口保行さんは「甘やかされて育った子は欲求不満耐性が低く、些細なことでも不満を爆発させることが多い。かつ、社会に適合しにくいため、おのずと生活の中心が家庭になる。だから家庭内暴力につながりやすい」という――。

※本稿は、出口保行『犯罪心理学者は見た危ない子育て』(SB新書)の一部を再編集したものです。

校庭で向かい合う二人の少年
写真=iStock.com/AlexLinch
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少年非行が減少傾向の中、増え続ける家庭内暴力

本書で紹介する“お嬢様育ち”のナルミは家庭内暴力事件を起こしました。

少年非行が全体としては減少傾向にある中で、近年、家庭内暴力は増加を続けています。

図表1を見るとわかる通り、令和3年度は全体で4140件。中学生、高校生が多いものの、近年は小学生もかなり増えています。

【図表】少年による家庭内暴力認知件数の推移

また、警察庁生活安全局によると、この4140件のうち暴力の対象としてもっとも多いのは母親の2352件で、父親は533件、兄弟姉妹453件、同居の親族161件と続き、その他、家財道具等も対象になっています。

家庭内暴力増加の原因を特定することはできませんが、現代の少年がさまざまなストレスにさらされていることは指摘できます。中学受験の加熱をはじめ、教育面でのプレッシャーもその1つでしょう。学校、塾、習い事で忙しいうえ、インターネット、SNSを通じて大量の情報に触れている中では、うまくストレス発散をすることが難しいのではないでしょうか?

欲求不満耐性が低い子が家庭内で不満を爆発させる

家庭内暴力に走るのは「甘やかし型」で育った子に限りませんが、「甘やかし型」で育った子は欲求不満耐性が低く、些細なことでも不満を爆発させることが多くあります。かつ、社会に適合しにくいので、おのずと生活の中心が家庭になります。ですから、家庭内暴力につながりやすいと考えられます。

また、家庭内暴力をする子は「内弁慶」で、外ではおとなしいことはよくあります。

親に対する怒り、反抗が引き起こすことはもちろんありますが、甘やかしてくれる家庭だからこそストレス発散で暴れるケースもあるのです。