欲求不満耐性の低い男子による性犯罪
甘やかされて育ち、欲求不満耐性の低い男子の場合、性犯罪に向かうこともあります。
性的な欲求は思春期になれば高まるのが自然ですが、それにうまく対処することが必要になります。相手があることですから、そうそう自分の思い通りにいくわけではありません。
それまで甘やかされて何でも思い通りになってきた人は、大きな壁にぶち当たります。そもそも人間関係をスムーズに構築するのが苦手ですから、異性との交際もままなりません。そこで、自分の性的欲求を満たすために、相手の合意なく行為におよぼうとします。
多くは、自分より明らかに弱い者、つまり子どもをターゲットにします。自分と同じくらいの年齢の人をターゲットにするのは、返り討ちに遭うのではと怖くてできないからです。そして、子どもを誘拐して強制わいせつにおよびます。
子どもの誘拐というと、映画やドラマの影響で身代金目的をイメージする人が多いかもしれません。しかし実際には、大半が性犯罪目的です。
したがって、子どもが行方不明になったときは、身代金の要求があるまで警察に連絡するのをためらうのではなく、すぐに連絡して子どもの安全確保を図ることが大事です。
パートナーや祖父母が甘やかしてしまうときは?
甘やかし型の子育ての話に戻りましょう。
「夫が子どもに甘くて困る」
「祖父母に預けると、子どもを甘やかすから困る」
よく聞く話です。
とくに子育てにコミットしている母親が、子どもに対して厳しく指導しているのに、周りの人が甘やかすので徹底できないストレスを抱えていることがあります。
「夫が甘いから子どもはなついていて、私は悪者になってしまう」
不満に思う気持ちはよくわかります。
実は私もずいぶん妻に言われました。
「私はこれだけ厳しくしているのに、自分だけいい人になりたいんでしょ」
仕事で毎日帰りが遅く、娘たちと一緒にいる時間が短い私は、厳しく接するなんてとてもできませんでした。自分が甘いというのも認識していました。そのうえで、夫婦で子育てについて常に話し合うようにしていました。
非行少年たちの親を見てきた経験から言っても、どちらかが厳しく、どちらかが甘いというのは、それだけでは問題になりません。むしろ、うまくバランスを取っていることが多いのではないかと思います。
ナルミの家族も、誰かひとりでも厳しめに指導する人がいたら違ったでしょう。ナルミは両親と祖父母から溺愛されて育ち、とくに祖父はナルミが欲しいものを何でも買い与えました。「犬を飼いたい」と言えば犬を、「やっぱり猫がいい」と言えば猫を買いましたが、ナルミはすぐにかわいがることをやめてしまった。そうして小学生のころにはわがままが目立つようになっていたのです。
「生き物を飼うということは、最後まで面倒を見る責任があるんだよ。途中で放棄するなら、もう生き物は飼えないよ」
そう真剣に話をする人がいたら、同じ間違いを繰り返さなかったかもしれません。