思春期の子どもは自分の見た目を気にするが、それが心(こころ)の病にまでなってしまう場合もある。10代の身体醜形症患者を診療してきた中嶋英雄さんは「本来、これからの自分をイメージし、内面を磨く準備をはじめる大切な時期なのに、中には『整形して顔さえ可愛くなれば将来も幸せになれる』と信じこむ子もいる」という――。
※本稿は、中嶋英雄『自分の見た目が許せない人への処方箋』(小学館)の一部を再編集したものです。
トラウマとなる体験があるPTSDタイプ
いじめや悪口など、ある特定の出来事によって深い傷を心に負いながらも心の奥にしまいこみ、その後何かのきっかけで思い出し、身体醜形症を発症することがあります。
クラスメイトから「ブサイクだね」と悪意のある言葉を投げられたり、親から「お姉ちゃんほど綺麗じゃないね」などと言われた体験がトラウマとなり、思春期になって自分の顔の悩みとして現われ、とらわれてしまうのです。
このタイプの症状は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に似ています。
PTSDは、突然の不幸な出来事によって生命の安全が脅かされたり、虐待などによって強い精神的衝撃を受けたことが原因で、それがトラウマとなって心身に支障をきたす病気です。
心の傷となるような衝撃的な出来事の体験をきっかけに身体醜形症を発症している場合は、フラッシュバックや悪夢を見る、過覚醒といった症状があらわれていると思います。
姉と比べられ一度も褒められたことがないルミさんの例
幼い頃から3歳上の姉と比べられ、褒められた記憶が一度もないというルミさん。顔へのコンプレックスが強く、大学を中退してからは引きこもりがつづいています。
小学校の頃、顔のホクロがだんだん目立ってきたことで、それを理由に姉と比べてけなされるようになりました。
母親から「なんでそんなところにホクロがあるの」「顔つきがきついわね」などと言われて悩みはじめますが、明るく振る舞うことで何とかしのいでいたそうです。
けれども中学校に入ると、「誰かがまた顔のことをけなすんじゃないか」とつねに気にするようになります。何も言われない日はホッとするものの、明日はまた言われるのではないかと、びくびくする毎日でした。