※本稿は、タッド尾身『The アプローチ』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。
パワーでは欧米人に敵わないことを悟った
19歳だった1994年に単身渡米、暗中模索でゴルフ修業をはじめるや、あっという間に時が過ぎて気がつけば14年。ゴルフを通じてさまざまな体験をしてきました。
アメリカではジュニアや大学生ゴルファーに世界最高級のサポート体制を敷いていますが、私も所属していたサンタバーバラ・シティ・カレッジのゴルフチームで、その多大な恩恵を受けたひとり。アメリカ人をはじめ、デンマーク人、スウェーデン人など国際色豊かなメンバー構成で毎週遠征試合に出ていましたが、プレーフィはプライベートコースでもほぼ無料。
有名なコースでも5ドル程度でラウンドできました。遠征費もすべて無料ならボールやグローブといった消耗品も無料支給され、クラブ購入時にも特別割引が適用されました。そんな恵まれた環境でのびのびとプレーができたおかげで、カリフォルニア州のカレッジ選手権でチーム優勝(個人7位)することもできました。
とはいえ、アメリカの試合ではドライバーショットで50ヤードも置いていかれることが頻繁にありました。欧米人の圧倒的なパワーゴルフを目の当たりにし、パワーではとても敵わないことを悟った私は、アプローチ、バンカー、パターを徹底的に磨いてショートゲームで勝負することにしました。
「ストックトン・ゴルフ」のメソッド
それが奏功してカリフォルニア州で歴史あるアマチュアトーナメントで優勝し、2003年にプロに転向してからも同地のプロツアーで優勝。ツアープロとして活動しながら、人種も違えば国籍も多岐にわたる多くの人たちにゴルフを指導させていただきました。
そんな中、日本ゴルフ界のレジェンド、倉本昌弘プロを通じて出会ったのがロン・ストックトンでした。父はメジャーチャンピオンのデイブ・ストックトン。デイブはタイガー・ウッズやローリー・マキロイ、フィル・ミケルソンらを指導したこともあり、日本でもショートゲームの名手として知られています。
一方、息子のロンは、かつて109週連続で世界女子ランキング1位に君臨した台湾のヤニ・ツェンやメジャーチャンピオンのモーガン・プレッセルらを指導し続けたキャリアの持ち主です。
彼らストックトン・ゴルフのメソッドは、私にとって目からウロコのことばかり。アプローチのテクニックにはそれなりに自信をもっていましたが、それをさらに強固なものにしてくれました。