アメリカではショットとアプローチは別物
日本ではアプローチとショットを関連づけ、ショットの流れでアプローチを考えますが、アメリカのゴルフではショットとアプローチはまったく別物で、とりわけグリーン周りのアプローチはパッティングに近いと考えます。
というのも、パッティングではショットのように積極的に体を使わないから。パターを腕で振るのに伴い体幹が使われる程度で、下半身を使う意識や体重移動は必要ありません。アプローチもこの要領で行ったほうが距離感も出やすく簡単です。アプローチで求められるのはナイスショットではなくナイスタッチというわけです。
私は日本でもこの考えをもとにレッスンをしていますが、あるときお客さんに「アプローチはパットに近い、という表現は良くないのでは?」と指摘を受けました。理由を聞くと「パットと同じだと横から払い打ってしまう」とのことでした。
アプローチはちょっと上から打ち込まなければいけません。ですから、お客さんのおっしゃることはもっともです。ただ、一方でヘッドが上から入りすぎる人には「横から払う」のイメージが有効だったりもします。つくづく人に伝えることの難しさを感じましたが、それはさておき、みなさんの中にも、そのお客さんのように考える方がおられると思うので、誤解のないよう事前に説明しておきましょう。
100ヤード以内が覚醒したタイガー・ウッズ
こんなエピソードがあります。プロに転向してからマスターズを初制覇する前後までのタイガー・ウッズは、グリーン周りはめちゃくちゃうまかったものの、40~100ヤードくらいの距離が苦手でした。ヘッドスピードが速すぎるために距離が合わず、合わせにいくと過度にスピンがかかってボールが戻りすぎていたのです。
どうにかならないかと、私も学んだデイブ・ストックトンに教えを乞うたのですが、そこでデイブはタイガーにこうアドバイスしました。
「タイガー、簡単だよ。君の場合、その距離もスイングとは切り離して短いアプローチの延長で打ったほうがいい。体重移動や体は使わなくていいから手の繊細な感覚を使えばいいよ」
そもそもタイガーはものすごい速さで体を回転させ、体重移動しながら行うフルスイングをスケールダウンするイメージでその距離を打っていました。距離が合わないのはそれが原因だったのです。アドバイスに従ったタイガーはスピンを自在にコントロールするようになり距離が合うようになりました。