選択の幅を広げる情報は、意思決定に不要

ある商品の売上アップの施策がA、B、Cの三つ上がっていたとする。

ここで「A、B、Cそれぞれの施策を打ったときに想定される売上アップ率」「それぞれの施策にかかるコスト」「実行時のリスク」といった情報があれば、「Aは売上アップ効果があまり期待できないから外そう」「Bはリスクが高くなるからやめておこう」などという意思決定に役立てることができる。つまり、これらの情報は、「マイナスのエントロピー」である。

一方、「A・B・Cに加えてDという選択肢もあるのではないか」とか、「Eを検討したほうがよい」という情報が入ってくると、選択の幅が広がってしまう。つまり、エントロピーを高くしてしまう。これは意思決定においては「不要な情報」ということになる。

「ちゃぶ台返し」をするのはダメ上司

もちろん、実はA・B・Cでは不十分で、新たな選択肢を検討しなくてはいけない場合もある。だが、意思決定の場というのは、ここまで十分に検討してきた最終段階である。ここでいきなり別案を出すのは、それまでの検討が不十分だったということを自ら認めるようなものである。

だが、現実には検討の最終段階において、「やっぱりこの方向もありではないか」などと言い出すリーダーは多いものだ。いわゆる「ちゃぶ台返し」であり、現場は大混乱する。

あるいは、部下から上がってきたレポートに対し、「うん。これはこれでよくわかったけど、ここが本当かどうかもっと詳しく調べてくれ」とか、「これについては情報が何も書いていないが、どうなってるんだ?」といった指示をすることは、一見正しいように見えて、実は意思決定を遅らせる余計な情報になりかねない。

あなたがリーダーの立場にいるとしたら、知らず知らずのうちにこうした指示をしていないか、注意していただきたい。