医師のいる「医療脱毛クリニック」での皮膚トラブルが相次いでいる。しかもそうしたクリニックは「うちでは手に負えない」として皮膚トラブルの治療にも応じない。皮膚科専門医の花房崇明さんは「医療脱毛が注目を集めたことで、皮膚科の専門知識を持たないまま、医療脱毛を行う医師が急増している。そこには業界特有の事情がある」という――。
医療レーザー脱毛を受ける女性
写真=iStock.com/Ugur Karakoc
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「うちでは手に負えないので皮膚科に行ってください」

「医療脱毛でやけどをしてしまい、うちでは手に負えないので皮膚科に行ってくださいと言われました」

大阪にある私の皮膚科クリニックには年に3~5人ほど、このような患者さんが来院されます。紹介状があるわけではなく、途方に暮れてご自身で病院を探して来られるのです。

医療脱毛用のレーザー脱毛器には、高い出力のレーザーをワンショットずつ照射していく「ショット式」、低出力のレーザーを施術エリア全体に時間をかけて照射していく「蓄熱式」の2種類があります。特に「ショット式」のほうが一度に高い出力を皮膚に照射するためやけどのリスクが高く、脱毛器の先端部の四角い形のやけどの痕が残ってしまった患者さんもいました。

蓄熱式でもやけどのリスクはあります。私も過去にはアトピー性皮膚炎の患者さんの医療脱毛で、予想以上に肌の反応が強く出てしまい、やけどさせてしまったことがあります。しかし、すぐに適切な処置を行い、そのまま2~3カ月、皮膚科専門医として責任を持って完治まで治療を継続させていただきました。もちろん、肌トラブルのない患者さんであっても簡単ではありません。

なぜ医療脱毛の医師が診てくれないのか

そもそも医療脱毛というのは、レーザー機器を使用して行う「レーザー脱毛」とよばれる施術方式を指します。ちなみにエステサロン、脱毛サロンで主に行われているのは光脱毛(IPL)、フラッシュ脱毛などと呼ばれる脱毛方式です。

永久脱毛の効果を得るためには、毛根で毛を作り出す「毛母細胞」と毛根の近くで毛根に毛が生える命令を出す「バルジ領域」を破壊する必要があり、この行為は医師法で医療行為に当たります。そのため、医療脱毛レーザーを照射できるのは、医師または医師の指示を受けた看護師のみです。医師がいれば場所を問わないわけではなく、医療機関でしか行えません。

では、なぜ医師がいる医療機関で脱毛を行った患者さんが、新たに皮膚科を受診しなければいけないのでしょうか。