皮膚科専門医の私が医療脱毛を行う理由

私自身、アトピーや髭が濃いことに悩んできたから分かるのですが、アトピーやニキビ肌の治療をしていても、ムダ毛剃りや髭剃りなどのたびに肌荒れが悪化してしまうという悪循環に陥っている患者さんは少なくありません。

しかし、リスクを考慮しながらレーザーの出力の調整、丁寧なアフターケアなどを行えば、施術は可能です。肌荒れが悪化する根本的な原因を解決することができるので、当院では医療脱毛をアトピーやニキビに悩む患者さんに提案することもあるほどです。私自身も、医療脱毛によって長年の顎周りや頬のアトピーの悩みから解消されました。

もし、皮膚科と美容医療、両方の知識と技術があれば、最小限のリスクとダウンタイム(痛みや赤み、腫れなどが回復するまでの期間)で最大限の効果を追求することが可能になります。このような理由からも、皮膚科の一般的知識を有する皮膚科専門医が美容医療を行う意義は大きいと考えています。

保険診療だけでは経営が難しくなっている

皮膚科専門医でない医師のクリニックが美容医療を始める背景として、保険診療だけでは経営が難しくなっているということがあるでしょう。最近は電気やガスなどの光熱費だけでなく、薬剤や医療用手袋などの診療材料費の価格も上がっていますが、高騰する経費を定められた診療報酬に価格転嫁をできないのが保険診療の難しいところです。

また、患者さん一人ひとりを丁寧に診察すればするほど、評判を聞いて多くの患者さんが来てくださるようになります。その一方で待ち時間が長くなってしまうために、スタッフたちは患者さんから叱られ、帰宅時間も遅くなって疲弊していく……。こういったジレンマを抱えているクリニックは少なくないはずです。

タブレット端末片手に患者からの聞き取りをする医師
写真=iStock.com/pcess609
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特に皮膚科はあらゆる診療科の中で最も診療報酬の単価が安く、人員を増やしたり、スタッフの給料を上げたりするために利益を追求するには、1人の患者さんにかける時間を短くして回転率を上げるしかありません。

一方、美容医療は自由診療で、クリニックが単価を決めることができます。経営面でのメリットも、私が美容医療を取り入れた理由の一つです。ですから、皮膚科専門医のいないクリニックでも、経営の課題解決のために美容医療を始めることについて理解できないわけではありません。