商品やサービスの魅力を、相手に伝えるにはどうすればいいか。編集家の松永光弘さんは「たとえば、カフェの経営者が、浄水器の精度の高さをそのまま伝えても、受け手にとっては『他人ごと』である可能性が高い。相手に納得、共感してもらうには、『伝えたいこと』を再解釈して言い換えることが必要だ」という――。

※本稿は、松永光弘『伝え方 伝えたいことを、伝えてはいけない。』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

家庭用浄水器のフィルターカートリッジ
写真=iStock.com/Andrii Medvediuk
※写真はイメージです

「伝えたいこと」は、しょせん「他人ごと」

「伝えたいこと」を伝えたほうがいいとよく聞きます。しかし、「伝えたいこと」をそのまま伝えても、なかなか受け入れてはもらえません。

それが受け手にとって「伝えられたいこと」でなければ、読んだり聞いたりしてもらえないからです。

ならば、受け手の注意を引くこと、ウケることだけを考えればいいのかというと、それもちがいます。当たり前の話ですが、いくらウケても、それが「伝えたいこと」と無関係であれば、そもそも伝え手にとって伝える意味がありません。

「伝えられたいこと」は、ただ受け手に望まれているだけでなく、伝え手にとっても意義のあるものでなくてはいけない。あくまでも「伝えられたいこと」は「伝えたいこと」を変換したものであるべきです。

では、「伝えたいこと」を「伝えられたいこと」に変換するにはどのようにすればいいのか。

怒りの葡萄』などで知られる作家、ジョン・スタインベックは、つぎのような言葉をのこしています。

「自分に関する物語でなければ、人は耳を傾けたりしない」

すなわち、ポイントは、受け手が「自分ごと」と感じられるようにすること、にあります。

「伝えたいこと」は伝え手目線のものであり、受け手にとっては「他人ごと」です。他人ごとだから、興味もわかないし、耳を傾ける気にもなりづらい。それを受け手が「自分ごと」と感じることができるように、再解釈して意味や価値を置きかえていく。