人の心を動かすメッセージを、どのようにつくればいいか。編集家の松永光弘さんは「たとえば、『高性能の低反発マットレス』を『朝までぐっすり眠るためのもの』と訴求しても、受け手は購入まではたどり着きづらい。相手にそれが必要性だと気づかせるには、『よさ』とは別に『わけ』まで意識して伝えることだ」という――。

※本稿は、松永光弘『伝え方 伝えたいことを、伝えてはいけない。』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

ベッドメイク中の手元
写真=iStock.com/brizmaker
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人はそもそも「踏みだせない存在」

突然ですが、名言をいくつか並べてみます。

「疑わずに最初の一段をのぼりなさい。階段のすべてが見えなくてもいい。とにかく最初の一歩を踏みだすのです」
――マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

「人生はどちらかです。勇気をもって挑むか、棒に振るか」
――ヘレン・ケラー

「いいかい、こわかったら、こわいほど、逆にそこに飛びこむんだ」
――岡本太郎

「行動を起こし、いまをつかめ。人は貝になるためにつくられたのではない」
――セオドア・ルーズベルト

「どんな道でも進まなければ山にたどり着かない」
――ノルウェーのことわざ

名言にはなんらかの教えがあるものですが、さて、これらに共通している教訓はなんでしょうか。

それは、「一歩を踏みだすことの大切さ」です。

人は目の前に道があっても、なかなか先に進もうとはしません。おそれをなしたり、億劫になったり、面倒くさくなったりと理由はさまざまですが、とにかく一歩が踏みだせない。

そのせいでせっかくの可能性の芽をみずから摘んでしまうこともあります。だからこそ、まず一歩を踏みだすことが大切――いずれの名言も異口同音にそう訴えています。

紙面の都合もあって、ここには5つだけを並べてみましたが、同様の名言は無数にあります。まさにいまも昔も、洋の東西を問わず、人は“踏みだせない存在”なのです。

なにがいいたいのかというと、コミュニケーションにおいても人は同じ態度をとりがちだということです。

受け手はやはり踏みだせず、なかなか積極的にコミュニケーションにかかわってはくれません。基本的に、前のめりではない。

ですから、「伝えるべきこと」をあらかじめひとことにするのはもちろん大切なのですが、そこに「かかわりたい(読んだり、聞いたりしたい)」と思えるような「引力」がほしい。

そのためにも、「伝えたいこと」を変換して導きだされる「ひとこと」、すなわち〈メッセージ〉は「魅力」を語ったものになっている必要があります。