ホンダは今冬、上級ミニバン「オデッセイ」を復活させる。自動車ライターの大音安弘さんは「1994年に発売された初代オデッセイは、ホンダの経営危機を救うほど大ヒットした。いったんは販売終了していたが、新たな価値を提供できれば、またヒットする可能性はある」という――。
海外でもヒットした初代ホンダ・オデッセイ
画像提供=本田技研工業
海外でもヒットした初代ホンダ・オデッセイ

生産拠点の集約で消えてしまっていた「オデッセイ」

2023年4月、ホンダは上級ミニバン「オデッセイ」を今冬に復活させることを発表した。新たに販売されるオデッセイは、2022年に販売を終了した5代目をベースとした改良型モデルになる予定だ。

公式発表によれば、ホンダの先進運転支援システム「Honda SENSING」のアップデートに加え、コネクテッド機能や電気式ギアセレクター、スマホ用のワイヤレス充電器などを新装備として追加。さらに内外装のドレスアップと快適装備の強化を図った「BLACK EDITION」を新設定するという。基本的な構成は、これまで同様、ガソリン車とハイブリッド車の2本立てとなるようだ。

そもそも、なぜオデッセイはホンダのカーラインアップから消えたのだろうか。その背景には、経営改善の一環で行われた生産拠点の集約がある。その結果、ホンダの乗用車のラインアップが徐々に見直され、最終的にはシェアの少ない上級モデルの不在へとつながった。

オデッセイの後継として、ミニバン「ステップワゴン」の上級モデル「スパーダ プレミアムライン」を追加する対策がとられたが、全てのホンダ上級車ユーザーのニーズを受け止めるまでには至らなかった。その打開策として、急遽、オデッセイの再登板が決定したのである。

販売不振のホンダを救った

奇しくもオデッセイは、ホンダの窮地を救うべく誕生した歴史がある。話は、1980年代まで遡る。

当時の日本では、レジャー市場が拡大していた。三菱「パジェロ」の大ヒットが象徴するように、ワゴンやSUVなど多目的に使えるRV(レクリエーション・ビークル)ブームが巻き起こっていた。

当時のホンダは自前のRVラインアップを持っておらず、販売不振へとつながっていく。バブル崩壊のダメージもあり、一時は他社との合併さえも噂されたほどだった。そんな状況からの起死回生の一撃として送り出されたのが、1994年10月に発売したホンダ初のミニバン「オデッセイ」だったのだ。