男性からのセクハラやいじめはどう対処すればいいのでしょうか。小説家、エッセイストであり、日本大学理事長である林真理子さんは「経験上、男性は女性をある程度のレベルまでは叩きません。叩くどころか、庇護してくれます。叩き始めるのは、その女性が思いのほか頭角をあらわしてきたり、はっきりと自分の敵となるレベルにまで達してからです。そのいじめ方は尋常ではなく、つらいですが、頭ひとつ抜きん出るとまた違った景色が見えてくるはずです」といいます――。
※本稿は、林真理子『成熟スイッチ』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。
私のまわりのセクハラ体験
ハラスメントは私のまわりにも溢れています。まずは最大の男尊女卑の根源が家の中にいる。もちろん夫のことです。
「女のくせに、遅くに帰ってくるなんて」
と平気で言い、どんなに私が忙しくても妻が食事の用意をするのが当たり前だと思っている。他にも例をあげるとキリがないので、ここではこれ以上やめておきます。
家の外では、会食している店で、
「おーい、ちょっとそこの女の子~」
と言ってお店の女性を呼ぶ男性をしばしば見かけます。こちらもカチンときますし、今どきこんなに意識が低い人がまだいるんだと思って、二度見してしまったりする。
先日も頼まれてあるパーティーに行ったところ、想像のはるか上をいく男尊女卑の巣窟のような場で、
「こんなジイさんたちがまだいるんだ……」
と感動すら覚えました。
業界にセクハラは無いと思っていたが…
少し前のことになりますが、私よりやや年下の女性作家たちと話していた時に、当時騒がれていたセクハラ事件が話題に上ったことがありました。その流れで私が、
「私たちの業界ってさあ、いっさいセクハラ無くてよかったよね」
と同意を求めたところ、私以外の全員が表情を硬くして「スッ……」と引くではありませんか。
あったんだー! と思って、すごく驚いたものです。私は一度もそういうことがなかったので、さすが健全な業界だなあと感心していたのです。今の若手作家に聞いてみても依然としてそれらしきことはあるらしい。だからみんなフェミニズムやジェンダー問題に敏感になっていくのかと合点がいきました。