なぜ日本の学校ではイジメなどのトラブルがなくならないのか。元公立中学校教師ののぶさんは「『みんな仲良し』を目指すからトラブルになる。大切なのは合わない人との適切な距離感を教えること。みんなを仲良しにしなくても、温かい雰囲気のクラスは作れる」という――。

※本稿は、のぶ『学校というブラック企業』(創元社)の一部を再編集したものです。

時代錯誤な「こうあるべき」から脱けられない

「学校で教えられる価値観が、昭和から変わっていなくて残念」。

私のツイートに多く寄せられるコメントだ。今の親世代が「私が学生時代に受けた指導だ!」「まだ同じことやっているの? 何時代?」と驚愕の声を上げる、古くてブラックな価値観に基づいた指導が、今も学校で続いている。

いくつか例を挙げてみる。

・休まない子が立派→皆勤賞が表彰される。休むと入試に不利だと脅される。
・自己犠牲が美徳→苦しくてもみんな頑張っているから、お前も我慢しろと言われる。
・長く継続を推奨→部活など、一度始めたことは嫌でもやめることが許されない。
・つらくても我慢→どんなにつらくなっても、逃げることを責められる。
・集団に従うのが正義→見た目、行動でみんな一緒を求められる。同調圧力。
・どんなルールも厳守→教師も理由が説明できない校則、決まりを守らせる。
・競争するために勉強→テスト、入試が目的の一斉授業。
・みんな友達→誰とでも仲良くすることを強いられる。
・連帯責任→一人のミスで、全員が罰を受ける。子ども同士で互いに見張らせる。

ご自身の学生時代を思い出して、おかしいと感じていた指導はあるだろうか。

前述した内容が全て悪い指導だと言うつもりはない。ただ、どの指導も一長一短があり、全ての子どもに当てはまる適切な指導とは言えない。子どもの特性を見分けて使い分ける必要があるのだが、その柔軟性を持ち合わせている教師が少ないように感じる。古くから学校にある文化や、「こうあるべき」という理想の子ども像から脱却できない人は、教師だけでなく保護者、地域の大人にも多い。

偏った校則がなくならない2つの理由

なぜ、どの学校でも同じような偏った指導が続いているのか。二つの理由が考えられる。

一つは、自分が過去に受けてきた指導や、自分の成功体験のみをもとに指導するからである。親世代が「私が学生時代にあった指導だ」と感じるのは当然で、今の学校で管理職や主任など中心的な役割を担っているのは、他でもない親と同世代の教員たちである。自分が受けてきた指導を、自分なりに実践して成功体験を積んできた人たちは、価値観を簡単に変えられない。

もう一つは、管理する方にとって都合がいい指導だからである。言われたことに疑問をもたない、指示通りに動く、つらい環境でも逃げない。聞いただけでも管理しやすいと分かる人間だ。多くの子どもを一斉に管理し、教育する必要があった学校と、従順に長く勤めてくれる人材がほしかった企業。昔は需要と供給が一致していたが、今は自ら考えて行動する人材が求められる中、学校の指導方針も変更を迫られている。

だから本稿では、今まで学校で当たり前とされていた価値観や指導方針の問題点を具体例を交えて明らかにし、今後の学校がブラックな指導から脱却するために必要な考え方を述べていきたい。

One Point
全ての子どもに当てはまる適切な指導はない。
どんな指導法も一つの成功事例にとらわれず、子どもの特性を見分けて柔軟に使い分ける必要がある。