セックス経験がないと「未熟者」と見なされる謎の文化

セックスはそこまで素晴らしいかというと、これもまた必ずしもそんなことはない。

そもそもうまくいくとは限らない。うまくいかなければ完全に白けてしまう。それが2回でも続けば、気は重くなり、それがまたうまくいかない原因になる。それがあると思うと、かえって会うのが嫌になったりもする。

冒頭に書いたように、うまくいったように見えても実は痛かったということもある。終わった後で、そんなに大したものではないと思った人だって多いはずだ。

けれども特別扱いされている行為だけに、それを経験しろという“圧”もすさまじい。

「おめえ女とやったことねえのかよ」

そんなことを言ってくる男がまだいるだろう。経験がないとなると、いきなり相手を「未熟者」のように見なして、マウントを取ってくる謎の文化がある。

男だけで酒を飲んでいる時に、こうした文化はよく姿を現す。

女性のなかにも、もうセックスやキスを経験したかどうかで騒ぐような文化はあるだろう。ハリウッドの青春映画なんかでもよく見かけるシーンだ。

こんなふうに語られる話題は、セックスだけではない。キス、デート、告白、体の成熟に関することなど様々だ。そのなかでもセックスは、その頂点に位置する話題と言える。

セックスは、人生の一時期にしか登場しない行為

これももとは、アウトサイダーの文化の一部なのだろう。本来は、きちんと親や先生の言いつけを守る主流の世界に反抗するものだったはずなのだが、これでは主流を補完しているだけだ。

ある調査では、35~39歳の世代でセックスの経験がない人は、男女とも十人にひとりほどだった(※5)。彼らの多くは、一生セックスをしないかもしれない。

決して少なくはないが、それでももっと多くてもおかしくないなと思ってしまう。

セックスレスの夫婦が増えていることがよく話題に上るけれども、そもそも40~50代のカップルなら、そんなに頻繁にはしなくなるのがむしろ普通だ。

こう考えてみればセックスは、人生の一時期にしか登場しない行為だ。子どもを作らない人が増えているのだから、本来は子どもを作るためにやるセックスを一度もやらない人だってもちろん増えているだろう。