良い人間関係を築くにはどうすればいいか。フリーライターの鶴見済さんは「一切の隠し事のない人間関係こそ本物というのは、暑苦しい幻想だ。リアルな人間関係にも、相手の発言を見えないようにする“ミュート”が必要である」という――。

※本稿は、鶴見済『人間関係を半分降りる 気楽なつながりの作り方』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

光の中を歩く母と息子のプロフィール。
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

相手にからかわれたら、自分もからかい返す必要がある

一年浪人をして大学受験が終わったあと、ほとんど人と会わずに過ごした。

ようやく受験勉強が終わったと、高校時代の友人から頻繁に飲み会の誘いの電話がかかってきていた。けれども、ひとつも行くと返事をしなかった。

やがて合格発表があり、大学には受かっていた。さらに同じ友人たちから、代わる代わる飲み会の誘いの電話が来た。合格は嬉しかったが、それでも行くとは決して言わなかった。奇妙に思われたことだろう。

自分はその人間関係がもう嫌だったのだ。

しているのはいつでも、誰かをからかうような、観察するような、そんな話ばかりだった。もちろん自分もいろいろ言われていた。それに対抗するためには、自分も相手をからかい返す必要がある。家に帰れば、言われた言葉がいつまでも頭に残ってしまう。

陰口の場に自分がいないのはとても危険なことだったが、もうどうでもよかった。こりごりだったのだ。