発達障害を抱える人にはどのような特徴があるのか。『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』(プレジデント社)の著者で、東京大学名誉教授の加藤進昌さんは「私の専門であるASD(自閉スペクトラム症)の患者さんには、『こだわりが強く、変化を嫌う』などの特徴がある。このため人間関係のトラブルを抱えやすい」という――。(後編/全2回)
お互いに議論する動揺カップルの戦い
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体力があっても球技が苦手な人が多い

前編から続く

――発達障害のひとつである「ASD(自閉スペクトラム症)」にはどんな特性があるのでしょうか。

【加藤進昌 東京大学名誉教授】ASDの特性としては「相手の表情や気持ちが読めない」「こだわりが強く、変化を嫌う」「専門的な話を一方的にしゃべり続ける」といったことが挙げられます。

これは書籍では触れていませんでしたが、「発達性協調運動障害(DCD)」という特性もあります。要するに協調運動機能が乏しく、体力があっても手と足を協調してうまく動かすのが難しいというものです。

たとえば、野球やサッカーのようなチームワークが要求されるスポーツが苦手な方が多いです。野球で言うと、サインを読んで動くとか、相手の動きを見てサッと先に走るといったことがほとんどできません。こういった動きをする必要があるスポーツは野球以外にもたくさんあるので運動全般が苦手だと思われがちですが、腕相撲ができないという意味ではありません。マラソンとか登山のようなスポーツは結構得意だったりします。マラソンは個人競技で時間との闘いであり、「数字」という彼らの大好きな明確な指標があるのがいいのでしょう。

この特性は多くのASD患者に当てはまるので、初診の患者さんには「スポーツは好きですか? 球技は得意ですか?」といった質問をして診断の参考にしています。