大人になってから発達障害の診察を受ける人が増えている。『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』(プレジデント社)の著者で、東京大学名誉教授の加藤進昌さんは「『発達障害グレーゾーン』という言葉が流行したが、過度に『自分は発達障害ではないか』と考えてしまう人を増やしてしまった。実際に私の診療科を受診しにくる人も半数が発達障害ではない」という――。(前編/全2回)
泌尿器科医医師は、患者に前立腺の問題の相談を与えます
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子どもだけでなく親も障害を抱えていた

――なぜ「大人の発達障害」に関心を持たれるようになったのですか。

【加藤進昌 東京大学名誉教授】さまざまなきっかけがありましたが、そのひとつにASD(自閉スペクトラム症)の子どもを持つ母親との出会いがありました。その方は、自分の子どもがASDと診断された後、病気に関する本を読んで「自分自身もASDだと思う」と話してくれました。診察室での振る舞いにも一見して変わったところはありませんでしたが、本人としては生きづらさを感じていたようです。

とても「筆まめ」な方で、自分の感じていることや悩みを詳細に書いて、私に渡してくれました。その分厚い手記に書かれていることは、専門書でASDについて記載してあることそのものだったんです。

私は小児科を卒業した「自閉症だった大人たち」を診察していたこともあったので、それらの患者たちとの関連性も見えてきました。そうした経験を積み重ねるなかで、成人であっても発達障害の症状を抱えているのに、別の診断名がついている方が一定数いることに気づき始めたのです。