観光消費の7割を支えるフランス国内客
フランスの人々のバカンス習慣が自国の観光業に大きく貢献していることは、消費実態のデータにも表れています。国立統計経済研究所によると、フランス国内の観光消費の約7割が国内客によるもので、その割合はコロナ禍前・コロナ禍後でもほぼ同じ。世界で最も多く外国からの観光客を迎える一方、その人々の消費が全体の3割にしか及ばないほど、国内客が観光にお金を使っているのです(*12)。
フランスの人々の観光へのお金のかけ具合を、日本と比べてみましょう。コロナ禍前の2019年、国内客による旅行消費額は日本では約22兆円、フランスでは約16兆円(1140億7000万ユーロ)。日本の人口はフランスの2倍弱なので、単純計算での一人当たりの平均額では、フランスの人々は日本の人々より観光に多くお金を使っていることになります(*13)。
夏のバカンス予算の目安は「月収1カ月分」
ではフランスの人々は実際、バカンスにどれくらい予算を割いているのでしょう。
この国では毎年複数の会社が、国内の成人(18歳以上)に夏のバカンス予算をヒアリングする恒例調査を行っています。よくメディアで引用されるのは、保険会社ソファンコによる調査会社オピニオン・ウェイ委託調査(国内成人約1000人を対象に7月に実施*14)と、保険会社ユーロップ・アシスタンスが調査会社IPSOSに委託する15カ国比較調査(15カ国の成人約1万5000人を対象に4〜5月に実施*15)です。調査時期や質問内容が異なっていることに留意しつつ、共通する項目の同年の結果を並べてご紹介しますね。前述の2調査の前者を調査A、後者を調査B、さらにもう一つ、クレジット会社コンフィディスによる同年の委託調査の結果を調査Cとして併記します(*16・図表4)。
3つの調査によると、フランスの一世帯の夏のバカンス予算の平均額は約1400〜1800ユーロ。調査によって数百ユーロの幅がありますが、日本円にして20万円〜25万円くらいと捉えていただけると良いかと思います。
これはフランスの法定最低賃金の月給(1645ユーロ、2022年5月*17)や民間企業サラリーマンの月給中央値(2005ユーロ、2020年*18)を鑑みて、ざっくりと「月収1カ月分弱」に当たる金額です。調査Aでは月収2000ユーロ未満の所得者層と3500ユーロ以上の所得者層によって異なる予算平均を明示しており、前者は902ユーロ(約12万6千円)、後者は2151ユーロ(約30万1千円)。所得額の差に関わらず、みなそれぞれの収入に見合った範囲で予算を組み、バカンスを実践している様子が浮かび上がっています(*19)。