日本の医師は忙しい。どうすれば働き方を変えられるのか。フランス在住のライター髙崎順子さんは「フランスでは医療福祉分野の人手不足が懸念されながらも、5週間の年次休暇を消化できる働き方をしている。背景には病院の仕組みがある」という――。

※本稿は、髙崎順子『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

医療チーム
写真=iStock.com/seb_ra
※写真はイメージです

休暇取得の時期を定め、仕事を段取りする

「ひと」を相手にする医療福祉の職業の休暇取得事例を見ていきましょう。

医療福祉には、児童福祉、障害者福祉、社会福祉、高齢者福祉、医療などの分野があります。養成課程と資格取得を必要とする専門職ながら、日本では人手不足と不規則な労働時間などにより、働き方がハードで過重労働が常態化しているイメージがあります。

フランスでも、医療福祉分野では常に人手不足が懸念されています。それでも各業界でそれぞれやり方を変えて、年次休暇の取得義務を果たしながら仕事を回しています。

たとえば保育園のように通園児童の生活拠点が家庭にある施設は、8月の1カ月間など決まった期間に施設全体を閉めてしまい、従業員全員に同時に休みを取得させます。親達は保育所の休園日に合わせて仕事を休み、社会もそれを許容しています。

児童養護施設やDVシェルター、ホームレス受け入れ施設など、困窮にある人々の生活拠点になっている施設は、このような一時休業ができません。支援の継続性と従業員の休暇取得の折衷案として、居住者の日常生活に支障を出ない範囲のルーティンを維持し、急を要しない支援(行政手続きや健康診断など)は、支援担当者の休暇取得期間の前後にずらして行うそう。たとえば未成年外国人に住居と生活支援を提供している非営利団体では、従業員の「休暇取得期間」と「同じ部署で一度に休暇を取得できる人数」を狭く設定し、半年前から業務調整を行っているといいます。

方法は違えども、「休暇取得の時期を定め、仕事を前もって段取りする」との考え方は、他の業界でも共通しています。

「5週間休める働き方」をする外科医師

医療福祉分野の方々へのインタビューで印象的だったのは、公立総合病院に勤める外科医師と、私立総合病院の集中治療室で働く看護師のお話でした。どちらもしっかり法定の休暇日数を取得し、かつそれが個人の特殊ケースではなく、勤務先の職場みんなのスタンダードになっていました。

お話を伺ったこのお二人は、日本の総合病院での勤務経験を持ち、フランスでその「休める働き方」を実践している日本人です。フランスは日本と類似の国民皆保険制度がありますが、その体制や医療へのアクセスは、日本とまた異なっています。私自身が医療従事者ではないこともあり、医師・看護師の実例取材は、日本の現場を良く知る人にお願いしたく、日本人・日本での勤務経験を持つ方を探しました。

そのお二人から見た医療現場での「5週間休める働き方」は、優劣の判定なく日仏の違いを教えてくださり、多くの示唆に富んでいます。この記事では、外科医師のお話をご本人の語り口調でお伝えしますね。