「気の毒」という思いやりと「庶務は女性向き」の二段重ね
とくに男女ともに一位である「家事・育児は女性がするべきだ」は、調査された女性の約3人に1人がアンコンシャス・バイアスを感じているのです。これらのなかには、長い歴史のなかで日本人に馴染んできた価値観も多く、いきなりそう考えるなと言われても無理でしょう。
しかしダイバーシティが世界的な価値観として広がりつつある昨今、企業はアンコンシャス・バイアス問題を避けることはできません。個人として気をつける場合、発言したり行動に移す前に「これはアンコンシャス・バイアスにならないか」を一瞬立ち止まって考える習慣が浸透することが必要です。
私の実体験から話をすると、営業部門から本社の商品開発部門に配転したとき、同時に配属された同期の男性と担当業務の差があったことは、今でいう「慈悲的アンコンシャス・バイアス」だったと思います。「一般職女性と総合職女性の軋轢があったら気の毒だ」という上司の思いやりと、「補助業務や庶務は女性の方が向いている」との慣習的な「性別役割」の存在で、アンコンシャス・バイアスの二段重ねだったと言えそうです。
人望が厚い素晴らしい上司でもおきること
その上司は、とても思いやりにあふれ、周囲からの人望も厚い素晴らしい方でした。しかも私は異動したばかりで、入社4年目とキャリアも浅く、上司の善意ある配慮に不服を言うわけにはいきません。先輩や同期女性に、酒席で愚痴を言うぐらいが精一杯でした。
実際には、一般職の女性たちとも良好な関係性でいられましたし、逆に色々と親しく話ができていました。上司の心配は、「杞憂」で済みました。
今は当時と異なり、アンコンシャス・バイアスは具体的なケーススタディでの啓発活動や学習機会が増えています。まずは、どのような思考や言動がアンコンシャス・バイアスにあたるかという事例を、知識としてインプットしていくことが大切だと思います。何がアンコンシャス・バイアスにあたるかの知識があれば、「気づき」につながり、「言動を抑制」することが可能になります。