純粋な「思いやり」「いたわり」の場合の厄介さ

様々なアンコンシャス・バイアスが存在するなかでも、とくに「慈悲的なアンコンシャス・バイアス」はさらに厄介だと感じています。

たとえば「性別役割」に上乗せして、「女性は弱いものであるから、過度な役割負荷はいけない」といったような考え方です。

なぜ厄介かと言えば、本人にはまったく他意はなく、純粋に「思いやり」や「いたわり」の感情から発言しているため、「アンコンシャス・バイアス」を受けた側が問題に感じても、相手に指摘しにくいのです。

たんなる「性別役割」などの通常の「アンコンシャス・バイアス」であれば、「それは思い込みや決めつけです」と言うことは、ハラスメントと同様に比較的対応しやすいご時世ですが、「思いやり、いたわり」の感情を前面に押し出された「慈悲的アンコンシャス・バイアス」は、指摘すると相手を含めた周囲から、逆に批判を受ける可能性もあるからです。

内閣府・男女共同参画局の「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」では、「直接ではないが言動や態度からそのように感じたことがある」という設問で男女の上位10項目を挙げています。(★は男女両方で上位10項目に入っているもの)

「家事・育児は女性がするべき」が男女ともに1位

【男性】
1.家事・育児は女性がするべきだ(22.5%)★
2.男性は仕事をして家計を支えるべきだ(21.3%)★
3.デートや食事のお金は男性が負担すべきだ(20.5%)★
4.男性は結婚して家庭をもって一人前だ(20.2%)
5.受付、接客・応対(お茶だしなど)は女性の仕事だ(19.6%)★
6.女性は感情的になりやすい(19.5%)★
7.女性には女性らしい感性があるものだ(19.4%)
8.家を継ぐのは男性であるべきだ(18.7%)★
9.共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ(18.6%)
9.親戚や地域の会合で食事の準備や配膳をするのは女性の役割だ(18.6%)★
【女性】
1.家事・育児は女性がするべきだ(31.8%)★
2.受付、接客・応対(お茶だしなど)は女性の仕事だ(26.7%)★
3.男性は仕事をして家計を支えるべきだ(26.2%)★
4.親戚や地域の会合で食事の準備や配膳をするのは女性の役割だ(26.0%)★
5.共働きで子どもの具合が悪くなった時、母親が看病すべきだ(25.8%)
6.職場での上司・同僚へのお茶くみは女性がする方が良い(25.3%)
7.女性は感情的になりやすい(24.3%)★
8.家を継ぐのは男性であるべきだ(23.9%)★
9.実の親、義理の親に関わらず、親の介護は女性がするべきだ(23.8%)
10.デートや食事のお金は男性が負担すべきだ(23.6%)★