戦国時代の武将・武田信玄はどのような姿をしていたのか。歴史学者の濱田浩一郎さんは「多くの人が思い浮かべる信玄の肖像画は別人であったと考えられている。信玄を描いた肖像画は他にもあるが、どれも確証が得られていない」という――。
伝武田信玄像模本、ただし現在は能登畠山家の肖像とされる
伝武田信玄像模本、ただし現在は能登畠山家の肖像とされる(画像=東京大学史料編纂所/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

「武田信玄はヒゲを生やした太った武将」は本当か

NHK大河ドラマ「どうする家康」では、主人公・徳川家康(松本潤)の宿敵となる戦国大名・武田信玄を俳優の阿部寛さんが演じています。阿部さん演じる信玄は、豊かなヒゲを生やし、泰然自若として、風格抜群。今後、家康とどのようなバトルをしていくかが注目されます。

これまで多くの役者が信玄を演じてきましたが、私のなかで、特に印象に残っているのが、1988年放送の大河ドラマ「武田信玄」です。信玄役を、当時、27歳の中井貴一さんが見事に演じられ(私はリアルタイムではなく再放送を毎週楽しみに見ていました)ました。

当初、中井さんは、信玄の宿敵・上杉謙信役のオファーをもらっていたそうです。

「清潔感があってしゅっとしている」。中井さんは、謙信のイメージに合致すると思われたのが理由とのこと。

ところがその話があった翌日に、いきなり電話がかかってきて、主役の信玄を演じて欲しいとの依頼が。あまりに急な話の変わりように、中井さんは驚いたようですが、中井さんは、即答せずに、友人ほかさまざまな人に「信玄やれそうかな」と聞いて回ったようです。

その時の周りの反応は「柄が違う」「信玄はもっとでっぷりしている」というものだったそうです。中井さん曰く「僕はあまのじゃく」な性格とのことで、周りの反応から逆に闘志に火が点いたのか「(信玄を)やります」と最終的に返答されたそうです。

(サンケイスポーツ電子版2018年7月1日11時配信【大河のころ 中井貴一(1)】)