プーチン氏、EU首脳が習近平氏を奪い合う
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月5日から3日間、中国を訪問し、習近平国家主席と会談を行った。今回マクロン大統領は、欧州連合(EU)の行政部局である欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と共に中国を訪問し、習近平国家主席らとロシア=ウクライナ情勢などに関して協議を行ったようだ。
これに先立ち、3月20日から3日間、習近平国家主席はロシアのウラジーミル・プーチン大統領を訪問し、両国間の協力関係を確認したばかりである。ロシアは中国との間で政治・軍事面での協力関係の深化が図られたと主張するが、その実、協議のほとんどは経済的な論点にとどまっており、中国は中国として一線を引いている様相がうかがえる。
ウクライナに侵攻して以降、欧米を中心とする国際社会から経済・金融制裁を科されたロシアは、中国に代表される新興国との間で関係の深化に努めている。実際、経済面での深化は進み、2022年のロシアと中国の貿易額は前年比3割増となった。中国がロシア産の原油の輸入を急増させたことが、両国間の貿易が急増した主因である。
EU首脳たちが中国を訪問する狙い
一方で中国は、ロシアに対して、化学品など、軍需品に転用できるモノの輸出を増やしている。また軍需品そのものの輸出も、第三国を経由するかたちで増やしているようだ。こうした動きをEU側は問題視するとともに、中国が過度にロシア寄りの立場を取らないように、けん制する思惑がマクロン大統領らにはあったと考えられる。
またEUには、中国と協力関係を深めることで、ロシアとウクライナの戦争の早期終結への道筋を付けたい思惑もあるようだ。中国は長期化する両国の戦争に対して仲裁役を買って出ている。EUには、中国と足並みをそろえてロシアとウクライナの戦争の早期終結を図るとともに、中国の外交面での台頭を防ぎたい意思があるのだろう。