ポンコツぶりが愛される「看板予報士」の素顔
テレビやネット配信の天気予報番組に求められるのは、何をおいても的中度の高さ。しかし時に、それ以外の要素が人々の注目を集めることがある。
千葉市に本社を置く世界最大の民間気象情報会社・ウェザーニューズ社は、YouTubeやニコニコ生放送などを通じて予報・解説番組「ウェザーニュースLiVE」を24時間生中継している。
同番組には1日に数回、女性キャスターと気象予報士の社員解説員による短い掛け合いコーナーが差し挟まれるのだが、解説員の一人である山口剛央氏が今、少なからぬ視聴者に支持されているのだ。
というのも彼、いかにも生真面目そうな風貌でありながらトークの中で社会不適合者ぎりぎりの生態がぽろぽろ露呈し、キャスター陣からなにかにつけ突っ込まれ、時には弄ばれてしまうのである。
例えば……、
・自宅周辺や通勤途中でその年最初にセミ(ミンミンゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシの3種類別)の鳴き声を聞いた日と最後に聞いた日、同じくダンゴムシを最初に見た日、自宅の冷房や暖房をその年初めて使った日と最後に使った日、などを毎年毎年記録し、初雪のように“平年日”を出している。
・社員証以外ほとんど何も入っていない空っぽの大きなカバンを必ず肩から下げて通勤。本人曰く、「万が一、何か入れるものができた時用に持っておきたい」
・自宅で発泡酒を飲みながらテレビで阪神タイガース戦を見る以外の唯一の趣味が、実際の気象観測に使う雨量計や地震計と同じ原理・構造の簡易版計測装置の自作。その勢いでなぜか、お尻がLED豆球で点滅する紙粘土製のホタルや、イルミネーションが施されたクリスマスツリー(本人はただの「電飾の木」だと強く主張)まで作ってしまう。
・番組内で紹介された食材の表面を炙る調理法に興味を覚え、わざわざバーナーを購入して様々な自作料理に試した結果、『炙りチーズナポリタン』にドハマり。現在もヘビーローテーションで一人暮らしの食卓に登場中。
などなど。
業界屈指のスペシャリストの一面
こうしたポンコツっぷりが逆に愛おしいのだろう、生中継中に画面にポップアップする視聴者コメントでは“ぐっさん”と呼ばれる山口氏の新たな迷・珍場面が生まれるたび、YouTubeへすぐさまそのシーンを切り抜いた動画が投稿され、各々に多数の反応が寄せられる現象が起こっている。
しかし彼は、ただの危ないオジサンでは断じてない。業界屈指の気象史・地象史のスペシャリストであり、特に地震に関しては日本で発生したあらゆる過去事例が詳細に頭へ刻み込まれているのだ。
この、すごいけど変なウェザーニューズの看板解説員“ぐっさん”はいつ頃、なぜ気象に興味を持ち、気象予報士としてどのような仕事をしてきたのか? 本社内スタジオで番組出演を終えたばかりの彼に、自らの来し方を語っていただいた。