地球温暖化防止をうたう環境保護団体の活動が、欧米を中心に過激化している。明星大学准教授の浜野喬士さんは「世界が終わるかどうかの瀬戸際なのだから、一切の現行の法は無効、あるいはより高い目的のために『踏み越え』ていいと、彼らは考えている」という――。(後編/全2回)
「環境的黙示録」という強い思い込み
「市民的不服従」を解説した前編に続き、後編の本稿では、ラディカルな活動を展開する「ジャスト・ストップ・オイル(JSO)」や「最後の世代(LG)」といった環境団体の行動を読み解くもうひとつの鍵として「環境的黙示録(Environmental Apocalypse)」という概念を導入してみたい。
黙示録(Apocalypse)あるいは終末論(Eschatology)とは、私たちが世界が終わるその直前、瀬戸際にいる、という思想である。これにはさまざまなバージョンがある。
環境的黙示録とは、おおむね次のように説明できる。「気候変動によって、この現在の世界は終わる/あるいはその瀬戸際に私たちはいる。待っているのは完全な破滅か、救済かである」という主張だ。
環境的黙示録にはさまざまなバージョンがある。第一の分岐点は、世界が終わった後に何が来るのか、についての考え方である。完全な無、あるいは絶望に満ちた新しい世界が来ると説く者もいれば、化石燃料から解放され、あらゆる差別や抑圧が消滅し、肉食が廃止され菜食が普遍化した「真の環境的ユートピア」が来ると主張する者もいる。
さらにそれぞれが描く未来に応じて、「世界の終わりは阻止すべきだ」「いやむしろ加速すべきだ」「人類全体を救うべきだ」「目覚めた一部の民だけを救えばいい」といった、運動の方向性の違いが生じてくる。
しかしいずれにせよ、現在のこの世界がこのままの状態で続くことはない、という認識では、環境的黙示録論者は一致している。われわれに残されているのは、大変革か破滅かの二択であり、かつ世界が終わるかどうかの瀬戸際なのだから、一切の現行の法は無効となる、あるいはより高い目的のために「踏み越え」が可能になると、彼らは考える。