地球温暖化防止をうたう環境保護団体の活動が、欧米を中心に過激化している。明星大学准教授の浜野喬士さんは「彼らの活動スタイルには『市民的不服従』と『環境的黙示録』という2つのテーマが大きく関わっている」という――。(前編/全2回)
ベルリン国際映画祭2023の会場で、レッドカーペットに自らの手を接着して座り込むドイツの環境団体「最後の世代(LG)」の活動家(2023年2月16日)
写真=AFP/時事通信フォト
ベルリン国際映画祭2023の会場で、レッドカーペットに自らの手を接着して座り込むドイツの環境団体「最後の世代(LG)」の活動家(2023年2月16日)

「美術品テロ」を行っているのはどんな団体なのか

昨年末、欧州を中心に、環境団体のメンバーによる芸術作品への攻撃が相次いだ。世界的な注目を集めることになったのが、2022年10月14日、イギリスの環境団体「ジャスト・ストップ・オイル(Just Stop Oil、以下JSO)」の活動家が、ナショナル・ギャラリー(ロンドン)所蔵のゴッホ『ひまわり』にトマトスープをかけた事件だ。同月23日にはドイツ・ポツダムの美術館で、同国の環境団体「最後の世代(Letzte Generation、以下LG)」のメンバーが、モネの『積みわら』にマッシュポテトかゆをまいた。

JSOは7月にもロンドン、10月27日にはオランダ・ハーグで、コンスタブルやフェルメールの作品をターゲットに、同様のデモンストレーションを行った。LGのメンバーは8月23日から3日連続で、ドイツ各地の美術館でラファエロやプッサン、クラナッハの絵画の額縁に手を接着し、11月15日には、オーストリアのLGメンバーが、ウイーンのレオポルド美術館でクリムトの傑作『死と生』に黒い液体をかけた。

さらにイタリアでは「ウルティマ・ジェネラツィオーネ[最後の世代](Ultima Generatione、以下UG)」、ノルウェーでは「ストップ・オリエティナ(Stopp Oljetinga、JSOのノルウェー版)」、フランスでは「最後の革新(Dernière Rénovation)」を名乗るグループが、同様に芸術作品を標的にした抗議行動を起こしている。

2023年に入ってからも、JSOやLGはロンドンやウィーンなどで幹線道路を封鎖する活動を続けている。2月16日にはLGの活動家がベルリン国際映画祭のレッドカーペットに自らの手を接着して座り込むアピールを行い、3月18日にはイタリアのUGのメンバーが、世界遺産であるフィレンツェのヴェッキオ宮殿の壁にオレンジ色のスプレーをふりまいて取り押さえられた

道路封鎖やサッカー場への乱入も

JSOとLGの成り立ちについて簡単に触れておく。

JSOは、2022年2月にイギリスで生まれたラディカル環境団体である。同団体は英国政府に対し、北海油田などでの石油や天然ガスの探査・開発・生産に対する新規許認可の停止を要求。主要道路の封鎖や芸術作品への攻撃、サッカー場やF1、コンサート会場への乱入などを行っている。JSOの起源の一つは2018年5月に活動を開始した「エクスティンクション・レべリオン(Extinction Rebellion)」で、現在も活発に活動しているほか、JSOとの人的コネクションやメンバーの重複が見られる。

LGはドイツのラディカル環境団体であり、2021年にベルリンで行われたハンガーストライキの参加メンバーをその前身とする。この団体もJSO同様、道路封鎖や芸術作品への直接行動で知られるが、食品廃棄物問題に焦点を当てた直接行動をするといった独自色も持つ。