かくいう私も、コロナ禍前からよくマスクをつけていました。医療従事者という側面もありましたが、普段から感情の変化が顔に出やすいタイプなので、まるで自分の気持ちを読み取られる感じがして、どこか心地よくなかったためです。ですから、マスク生活には抵抗がありませんでしたし、今後も着用し続けると思います。私のようにマスクをし続けたい人は、春や秋は花粉、冬は風邪の予防などの理由を用意しておくと、気持ちは楽になるでしょう。
職場にはびこる2つの同調圧力
会社というのは大人数で一つのコミュニティーを作っているので、同調圧力が生まれやすい場所です。マスクについても「個人の判断」といいながら、何らかの同調圧力が既に生まれていると思います。
同調圧力には「その場の雰囲気に従わないといけない」という息苦しさを生むといったネガティブな面がありますが、「従ってさえいれば、その集団から排除されない」という安心感を与えてくれるものでもあります。ですから会社は、「同調圧力をなくす」ことを考えるよりも、「適度に調整する」ことを考えてほしいと思います。
もともと多くの会社組織には、常に矛盾した2つの同調圧力があります。1つは「みんな一緒、平等であれ」という圧力です。たとえば、仕事が忙しいときに1人だけ早く帰るのは許されない、いいことについても1人だけ抜け駆けするのは許さない、といったものです。
マスクについても、みんながつけているのに「息苦しいから」「暑いから」といって自分だけ外すのは勇気がいります。反対にみんながマスクを外しているのであれば、「顔全部を出すのは恥ずかしい」という理由で1人だけマスクをするのは、抵抗を感じるようになります。
もう1つの圧力は、年齢や肩書などの上下関係が絶対というものです。「みんな一緒であれ、平等であれ」「抜け駆けはいけない」という1つ目の圧力がある一方で、「上の人の意見に従うのは当然」という、矛盾した圧力があるのです。ですから、ほとんどの若手社員がマスクを外したいと思っていても、上司がマスクをつけていたら外しにくくなります。逆に、上司がマスクを外していたら、マスクをしていたくても、外さなくてはならないように感じてしまいます。
先ほど、多くの人たちが「周りを見て決める」と言っていたと述べましたが、それは実際は「周り」というよりも、「上司」の様子であることが多いのです。