この季節、「疲れが取れない」「やる気が出ない」「何となく体調がすぐれない」といった適応障害の人が増える傾向がある。いわゆる「五月病」だ。産業医で精神科医の井上智介さんは「治療が遅れると進行してうつ病になる可能性もある。リモートワークが引き金になることも多いため、職場全体で気を付ける必要がある」という――。
ソファに体育座りで静かに泣いている女性
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連休も遊びに出かける意欲が起きない

ある会社の企画部門に勤める30歳のYさんは今年1月、前から希望していたプロジェクトのリーダーに抜てきされました。やりたかった仕事で、初めてのリーダーの役割に張り切って、忙しいながらも充実した毎日を送っていました。

ところが4月になると上司が変わり、チーム内のメンバーが異動したりして環境に変化がありました。新しい上司にプロジェクトについて説明したり、新規にチームに加わったメンバーのサポートをしながら、チームリーダーの仕事に取り組む日々。だんだんと、まじめで責任感の強いYさんのところに業務が集中するようになってしまいました。毎日仕事が終わらず、遅くまで残業することも増えてきました。

すると4月の終わりごろから、体は疲れているのに夜眠れず、食欲もなくなってきました。仕事でも、細かいミスをすることが出てきたのです。「リフレッシュしよう」と迎えた連休も、遊びに出かける意欲が起きず、なんとなく体調がすぐれないという状態です。そして連休明けは、「朝起きて仕事に行こうと思ったら涙が止まらない」といった症状が出始めました。

出勤時間が遅くなり、会社でも仕事に集中できていないYさんの様子を見た同僚が心配し、産業医に相談することを勧めました。そして産業医から精神科の受診を促され、適応障害の診断を受けたのです。

4月に頑張りすぎて、5月にエネルギー切れに

4月は環境が変わりやすい時期です。自分が異動や転職することもありますし、Yさんのケースのように、周りの人が異動したり退職したりして、環境が変わるケースもあります。また、新年度は張り切って新しいことを始めたくなることも多く、資格をとるために勉強を始めたり、ジムに通い始めたりする人もいるでしょう。最初は良いのですが、しばらくすると負担になってくることもあります。

そうして4月に頑張った分、5月に入ってゴールデンウィークが明けたころにエネルギー切れになる。それがいわゆる「五月病」、つまり「適応障害」です。