過剰適応してしまい発症する
「適応障害」は、その病名から「環境に適応できなかったためになる病気」と勘違いされがちですが、ほとんどの場合はそうではありません。むしろ、環境の変化に頑張って適応しようとして過剰適応した結果、エネルギーが切れて自律神経のバランスを崩してしまうという病気です。
倦怠感や疲労感が取れない、夜眠れない、不安が強くなる、動悸や頭痛、腹痛などさまざまな症状が起こります。仕事が忙しかったり、ストレスが強くなったりすると、一時的にこうした症状が出ることはありますが、週末にゆっくり休んでよくなるようなら心配はありません。目安は2週間です。症状が2週間以上続くようなら、病院を受診するようにしてください。
ただ、どんな症状が表れるかは個人差があります。ですから普段から、「自分はストレスがかかったときにどんな症状が出やすいか」を知っておくといいでしょう。先ほど挙げた症状のほかにも、胃が痛くなる、肌が荒れる、吐き気がするなど、人によって症状の出方は異なります。バロメーターになる体調の変化を知っておき、症状が出たら早めに休養を取るようにしてください。生活リズムを見直し、睡眠時間を取れるようにしたり、食生活を見直したりすることも大切です。
適応障害になっても、通院して治療すると3カ月ぐらいでよくなる人が多いです。しかし、症状が出てきて2週間以上経っても我慢して病院に行かず、治療を始めるのが遅くなると、適応障害からうつ病に進行する可能性があります。その分治療も長引いてしまうので、早めに受診することが大切です。
「ストレス源から離れること」が一番の治療
適応障害の治療は、薬、環境調整、カウンセリングの3本柱で考えますが、それぞれ目的が異なります。
薬については、「適応障害の根本の治療薬」があるわけではありません。眠れなかったら睡眠薬、頭痛がひどいなら頭痛薬、不安が強ければそれを抑える薬といった対症療法です。心身に出ている不快な症状を、薬で抑えることが目的です。
そして、適応障害の中心となる治療法は、環境調整です。
適応障害の大きな特徴は、うつ病と違って、ストレスの源がはっきりしていることです。環境を変えて、適応障害の原因となっているストレスの源から離れるだけで、症状が改善するはずです。
会社員であれば、いったん休職する、部署を変わるなどの配置転換をする、といったことが、もっとも効果が出るケースも珍しくありません。休職することで症状が改善したからといって、また元の職場環境に戻そうとする会社もありますが、それは避けなくてはなりません。またストレスの源に触れることになるので、症状がぶり返しかねないからです。