この期間は「嵐の前の静けさ」なのか
「新型コロナ」上陸から3年が経過した。いわゆる第8波も収束の兆しとなり、発熱外来もいまだに満枠となる日はあるものの、熱発者に占めるコロナ患者さんの割合は激減した。2019~2020年シーズン以降、すっかり鳴りを潜めていたインフルエンザの患者さんがむしろ増えてきている現状だ。現場の肌感覚では、当初懸念されていた「コロナとインフルのW大流行」や「コロナとインフルの重複感染者多数」といった最悪の事態は今のところ起きていないように思われる。
このままインフルエンザもコロナも一日も早く終息してもらいたいところだが、岸田政権の打ち出した5月からの「5類化」とマスク着用緩和といった施策が再流行の起爆剤となってしまわないか、私を含め現場の医療従事者は凪のような現状を束の間の「嵐の前の静けさ」なのではないかと、懸念とともに固唾を飲んで見守っている状況ともいえよう。
マスクよりも先に廃止すべき「対策」がある
新型コロナウイルスが上陸して以来、この3年間で私たちの生活や習慣は一変してしまった。ウイルスという見えない「敵」からいかに身を守るか。もちろんコロナ以前でもインフルエンザやその他のカゼを引き起こすウイルスたちと私たちは「共存」してきたわけだが、これらよりも感染性が強く、変異と流行を季節を問わず繰り返し、そして重症化や死に至る、さらに後遺症までもたらす未曾有の新型ウイルスということもあって、当初より多くの「感染対策」が私たちの身の周りで講じられた。
そしてこれらの「対策」の中には、重要なものや有効性が期待できるものももちろんありながら、当初からその効用について首をかしげざるを得ないものも少なからずあった。
今回、政府はマスクの着用緩和に舵を切ろうとしているが、飛沫感染予防という、自分への感染を防御するよりも他者にウイルスをうつさないために有効とされるマスクの着用緩和を急ぐよりも、まず廃止や見直す必要がある「対策」が他にあるのではなかろうか。本稿では、「5類化」の是非やタイミングと関係なく、これらの無意味な「対策」を今一度炙り出してみたいと思う。