アクリル板やビニール幕も今すぐやめていい

そもそも手袋をしていると、自分の手指の汚染を直接感じないことから、手袋をしている本人は自分の手がいつまでも清潔であると勘違いしてしまいがちである。手袋の本当の意味を十分に理解していないと、自らが汚染を次々に移していっていることに気づかないのだ。一方、手袋の役割と意味合いを理解している者にとっては、このような誤用は非常に不快に見えてしまうのである。

「感染対策=手袋」、手袋を着けてさえいればウイルス対策を意識していると見てもらえるという、いわゆる「やってる感」に由来するこの誤った「対策」は、即座に見直すべきといえよう。

飲食店などでよく見かけるアクリル板の“ついたて”やビニール幕も、今すぐにでもやめてよい「対策」だ。マスクを外した状態で飲食する際の飛沫拡散を防ぐためのものと推察されるが、ラーメン店などのカウンターに林立するこれらのアクリル板を見て、飛沫拡散防止にどれだけ効果が期待できるのか疑問に思っている人のほうが多いのではなかろうか。

これもレジ手袋と同様に、客が入れ替わるたびに交換されないことはもちろん、清拭せいしきされることもほとんどない。透明であるはずなのに、飛沫なのか油滴なのか不明な汚れで透き通っていないアクリル板を目にすることも珍しくない。

新宿の繁華街
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「ひとつおき」にバツ印がついた椅子も意味がない

自治体によっては感染対策を行っている「認証店」の条件として、このアクリル板設置を掲げているところもあることから、認証が欲しい店側としても設置せざるを得ないのだろうけれども、これも効果不明な「やってる感」の典型例と言えるだろう。

板やビニール幕そのものが不潔であることももちろんだが、これらによって空気が部分的に滞留し、店内の効果的な換気がかえって妨げられるという指摘も以前から存在する。さらにこれらのバリケード越しでは声がよく聞きとれないこともあって、発する声も大きくなりがちになり、わざわざアクリル板やビニール幕を避けて会話するなど、本末転倒な事態をも生じさせており、これらももはや無意味であるどころか有害な「対策」として即座に廃止すべきものとして良いだろう。

飲食店といえば、その店外に並べられた入店待ちの客のための椅子に「ひとつおき」にバツ印が付けられているのもよく見かける。待合室などに置かれているソファ、公園に置かれているベンチにまでも同様に、客同士の間隔を空けて座るよう指示が書かれていることもある。これにもどれだけの効果があるのかはなはだ疑問だ。