明細書の作成・提出のルールが形骸化している

つまり、会計責任者は年に一回、政治資金収支報告書を作成・提出するだけでなく、その記載の根拠となる会計帳簿を、政治団体・政党等の事務所に常時備え付けることとされている。これは、記載事項となる政治資金の収支が発生する都度、会計帳簿に記載することを前提としている。

郷原信郎“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)
郷原信郎『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)

そして、会計責任者が知らないところで収支が発生することがないよう、政治団体の代表者等が、寄附を受けたり、支出をしたりした場合に、七日以内に明細書を作成して会計責任者に提出することを義務付け、会計責任者等が、その明細書に基づいて会計帳簿への記載をすることができるようにしている。

これは、政治資金の収支を、発生の都度、逐次、処理することを求める規定なのであるが、実際には、このような明細書の作成・提出の期限に関するルールは形骸化し、会計帳簿の記載、明細書の作成は、収支報告書の作成の時期にまとめて行われているようだ。

逐次・迅速に収支を把握して処理する政治資金規正法のルールがあっても、その記録化についてのルールがないために、収支報告書の作成・提出と併せてまとめて会計帳簿、明細書の処理をしても、提出する収支報告書上は証拠が残らず、明細書の提出義務違反等で処罰されることもない。それが、逐次・迅速処理のルールの形骸化につながっているのである。

【関連記事】
なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因
なぜ「君が代」を「我が日の本」と必ず替えて歌ったのか…「右翼政治家」と呼ばれた石原慎太郎氏の本当の思想
いま増税するなんて狂気の沙汰である…政府は「若者が結婚しない本当の理由」を分かっていない
睡眠時間をいくら削っても報われない…全国紙の元政治部記者がユーチューバーに転身した理由
なぜジャニー喜多川氏の性加害を日本メディアは黙殺するのか…英BBCからの取材に私が話したこと