罪に問うためには宛先の特定が必要だが…

国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも後援会など複数の政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から直接、現金で政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、政治資金収支報告書にもまったく記載しなかったという場合に、政治資金規正法の罰則を適用するためには、どの政治団体・政党支部宛ての献金かを特定する必要がある。特定されないと、どの「政治資金収支報告書」に記載すべきであったのかがわからない。

もし、その献金が政治家「個人」に宛てた「寄附」だとすれば、「公職の候補者」本人に対する寄附は政治資金規正法で禁止されているので(二一条の二)、その規定に違反して寄附をした側も、寄附を受け取った政治家本人も処罰の対象となる。

しかし、国会議員たる政治家の場合、資金管理団体・政党支部等の複数の「政治資金の財布」があるのでそれらに宛てた寄附かもしれない。そうだとすれば、その団体や政党支部の政治資金収支報告書に記載しないことが犯罪となる。

暗闇の中で賄賂を与える男
写真=iStock.com/Atstock Productions
※写真はイメージです

ザル法どころか真ん中に「大穴」が開いている

いずれにせよ、ヤミ献金を政治資金規正法違反に問うためには、その「宛先」を特定することが不可欠だ。しかし、政治家が直接現金で受け取る「ヤミ献金」というのは、「裏金」でやり取りされ、領収書も交わさない。受け取った側が、「……宛ての政治資金として受け取りました」と自白しない限り、「宛先」が特定できない。

「表」に出すことなく、裏金として使うために受け取るのであるから、政治家個人宛てのお金か、どの団体宛てかなどということは、通常、考えていない。

結局、どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できないという理由で、刑事責任が問えないことになる場合が大部分だ。

それが、「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に開いた「大穴」だ。