「古い価値観からの脱却」を実現できるか
アサヒビールは、社外から招いたトップの指揮によって自社の強み、弱みなどを分析し、新しいビール体験を生み出すことによって成長してきた。今後、醸造技術の向上やマーケティング戦略の実施などで成果を上げた人が、勤続年数ではなく実績に応じて評価される組織風土が醸成されれば、やる気、働きがいなど従業員エンゲージメントは高まるだろう。
それは、企業の成長加速を支える。そうした企業の増加が、わが国経済の実力(潜在成長率)の向上につながる。徐々にではあるが、わが国でも物価上昇ペースに見合う以上に賃金水準を引き上げ、個々人の成長志向、挑戦をサポートしようとする企業は増えている。
ただ、そうした価値観がわが国産業界全体に浸透しているとはいえない。依然として、終身雇用・年功序列の価値観から脱却しきれない企業は多い。プロ経営者として招かれた新しいトップの指揮の下でアサヒビールが従業員の士気をさらに高め、より強い成長志向を組織に浸透させることができるか否かは注目に値する。それが実現されれば、既存の雇用慣行から脱却し、新しい需要創出に取り組む本邦企業も増えるだろう。